ボスとJKの、その後。 (ページ5)

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【景瑚side】

部屋の明かりは落として、ベッド横の小さなライトだけが静かに灯っていた。

炊きたてのご飯と、簡単なお味噌汁。
ふたりで食べて、洗い物をして、お風呂にも入って──
少しずつ、“暮らす”って感覚が、この空間に染み込んでいくのを感じていた。

Aは、ふわっとした部屋着に着替えてベッドに腰を下ろしていて、
その姿がいつもより少しだけ大人びて見えた。

景瑚「……眠そう？」

A『ううん。ちょっと……緊張してるだけ』

景瑚「緊張するようなこと、なんもしてないけどな」

A『……でも、こうして隣にいてくれるのが、ちょっと夢みたいで』

景瑚「夢なら、もうちょっとロマンチックなこと言うべきだった？」

冗談めかして言ってみたけど、彼女は小さく首を横に振った。

A『ううん。景瑚さんが来てくれたことが、いちばんロマンチック』

景瑚「……そっか」

彼女はそう言って、すこしだけ俯いた。
まだ不安がゼロになったわけじゃない。
でもそれを見せまいとする強さが、なんだか胸に刺さった。

だから俺は、ベッドに腰を下ろして、彼女の隣にゆっくりと近づいた。

景瑚「おいで。」

A『え……？』

景瑚「ぎゅー、するだけ」

彼女がほんの一瞬だけ戸惑ってから、すとんと俺の胸に体を預けてくる。

そのまま、何も言わずに抱きしめた。

体温と、香りと、呼吸の音。
言葉にしなくても伝わるものがある気がして、
俺はただ、背中に手を回して、少し強く抱きしめた。

景瑚「……がんばらなくていいよ。今日はもう、ちゃんとえらかったんだから」

A『……泣かせるようなこと言わないでください』

小さな声が耳元で震えていた。
それでも俺の胸から離れようとしなかったのが、何よりの気持ちだった。

景瑚「……好きだよ。すっごく」

声に出したその言葉に、彼女がぎゅっと背中をつかんできた。

今日という日が、彼女にとって“ひとりじゃない始まり”になりますように──
そんな願いをこめて、もう一度、そっと抱きしめた。