ボスとJKの、その後。 (ページ16)

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お家デート（再）ページ16

景瑚「いらっしゃい。靴、そこ置いていいよ」

『お邪魔します……』

ちょっとだけ緊張した声が玄関に響く。
何度か来てるはずなのに、「彼氏の家」という響きに慣れるのはもう少し先みたいだ。

景瑚「じゃあ、今日はよろしくお願いします」

『……こちらこそ、よろしくお願いします』

お互いにペコリと頭を下げて、なんだか変な感じ。
けど、そんな律儀なところも好きなんよなって、俺は思ってる。

キッチンに向かったAは、すでに気合い入ってる顔してて――
エプロンを取り出して首にかける姿が、妙に板についてる。

景瑚「料理、本当にするんやな」

『一人暮らし始めてからは、ちょっとずつ頑張ってます。今日は……腕の見せどころですから』

景瑚「期待していい？」

『はいっ、頑張ります』

自信たっぷりってわけじゃないけど、少し背伸びしたような声。
俺のために気合い入れてくれてるのが伝わって、胸があったかくなる。

『じゃあ景瑚さんは、野菜洗ってください』

景瑚「おっけ。っていうか、できることが限られてるのバレてるな」

『ふふ。でも、助かりますよ』

俺が台所で野菜を洗う間、Aは器用に下ごしらえを進めてく。
真剣なまなざしで包丁を使うその姿を、ふとしたタイミングで見てしまって――

景瑚「可愛い」

『……え？』

景瑚「あ、ごめん。声に出てた」

『もう……！』

照れてうつむく横顔に、心の中でガッツポーズ。
怒ってるようで、顔はちゃんと緩んでる。
そういう素直なとこ、ほんとに愛しい。

料理中もずっとそんな感じで、笑ったり、ちょっとミスって焦ったり。
でも、すごく楽しそうに料理してくれて――

景瑚「うまそう」

『できました！味見してください』

景瑚「……うまっ」

『ほんとですか？』

景瑚「ほんまに。びっくりした。料理上手なんやな」

『……練習したんです。景瑚さんに、美味しいって言ってもらえるように』

なんだそれ。
嬉しすぎて、なんかもうずっと撫でていたくなった。

景瑚「……なんかもう、結婚したくなるわ」

『っ、からかわないでください！』

景瑚「いや、わりと本気やけどな」

そっぽ向いたまま赤くなってるのを、目で追いながら、
「幸せってこういうことかもしれんな」って思った夜だった。