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『ううん、たぶん──』
玄関を開けると、そこに立っていたのは、カジュアルなシャツにデニム姿の景瑚さん。
手には紙袋を提げていた。
景瑚「こんにちは。おじゃましてもいい？」
『景瑚さん！来てくれたんですね！』
景瑚「うん。引っ越しって聞いたからさ。なんか差し入れでも持ってこうかなって思って」
紙袋の中には、フルーツサンドと飲み物が入っていた。
『うわー……おいしそう。ちょうどお腹すいてたとこです』
景瑚「良かった。るっくんも、こんにちは」
瑠姫「おう。」
景瑚「手伝いもするよ。俺、意外とこういうの得意」
『じゃあテレビ台お願いしてもいいですか？さっきから放置してあって……』
景瑚「任された！」
景瑚さんが部屋に入ると、空気がふわっとやわらいだ。
どこかで緊張していたのが少しほぐれていく感じがして、私は自然と笑っていた。
瑠姫「……そうだ、A」
『ん？』
瑠姫「お前の服とかの段ボール、今から車で取ってくる」
『あっ、ありがとう……！ごめんね、わざわざ』
瑠姫「いいよ。どうせなら今のうちに運んだほうがいいだろ。……その間、あんまり調子乗るなよ？」
景瑚「えっ、俺？慎ましく待ってるつもりなんだけど」
瑠姫「その“つもり”が信用できないって言ってんだよ」
景瑚「るっくん……俺、今日けっこうマジで大人しめじゃない？」
瑠姫「俺がいない間、なんかあったら本気で怒るからな」
『お兄ちゃん……怖い顔してても、結局やさしいのバレてるよ』
瑠姫「うるさい。行ってくる」
ドアが閉まり、玄関の音が遠ざかって──
部屋の中は、ふたりきりになった。
景瑚「……るっくん、ほんとにお兄ちゃんしてるよね。感心するわ」
『うん。ちょっと過保護すぎるかもだけど。』
景瑚「でも、それだけ大事にされてるってことだよ。……俺も、安心してもらえるように、がんばらなきゃだな」
『……ありがとう。景瑚さんが来てくれるだけでも、すごく安心します』
景瑚「ほんと？じゃあ俺、毎週通おうかな」
『それは……ちょっとだけ嬉しい、かも』
笑いながら、私はキッチンにあったコップに紅茶を注いだ。
一人暮らしはまだ始まったばかり。でも今日みたいな時間があるなら、きっと大丈夫。
この部屋で、ひとりで過ごす毎日も。
ときどき訪れる“ふたりの時間”も。
それぞれ、ちゃんと大切にしていきたいと思った。
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えり(プロフ) - あぁーもうドキドキが止まりません♡ (5月12日 8時) (
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作者名：はーと。 | 作成日時：2025年5月9日 1時
