一人暮らしの始まり。 ページ1
瑠姫「このネジ……これで合ってる？」
『うん、それ。それ。六角のやつでぐるぐる回すやつ』
瑠姫「手、挟むなよ」
『わかってるってば』
春のやわらかい日差しが窓から差し込む部屋で、私たちは床にしゃがみ込んで、汗をかきながら家具と格闘していた。
新生活。新居。ひとり暮らし。
──全部、明日から始まる。
新しく住むのは、大学から徒歩10分くらいの場所にあるマンション。
4階建ての3階で、1Kだけど日当たりも良くて、白を基調とした清潔感のある内装。
特にキッチンはお気に入りで、ちょっとした料理番組に出てきそうなくらい、立派で可愛い。
でも今は、そのキッチンのすぐそばで、瑠姫くんが真剣に棚を組み立てている。
『お兄ちゃん、さっきから説明書無視しすぎじゃない？』
瑠姫「説明書が間違ってる場合もあるだろ」
『ないよ！？説明書だよ！？』
瑠姫「……お前にこういう作業任せるの、不安でさ」
私が顔をあげると、瑠姫くんはネジを締めながら少しだけ目を伏せていた。
瑠姫「ほんとに、ひとりで大丈夫か？」
『……うん、大丈夫。お兄ちゃんには迷惑かけないようにするし』
瑠姫「いや、迷惑とかじゃなくて。心配なんだよ」
その声は、優しかった。
瑠姫「防犯もそうだし、夜道も、近所も、ご飯も、体調も……
お前がひとりでいるって、想像するだけで落ち着かない」
『……そんなに？』
瑠姫「そんなに」
くしゃっと前髪をかき上げて、小さくため息をつく。
瑠姫「もう決めたことだし、信じてないわけじゃないけどさ。……でも、お兄ちゃんは心配する生き物なんだよ」
『……ふふ。お兄ちゃん、ほんとに過保護すぎる』
瑠姫「そう思ってくれていいよ。そういう立場なんだから」
私は笑って、棚のパーツをそっと押さえながら言った。
『でも、ありがとう。……心配してくれてうれしいよ』
瑠姫「……当たり前だろ」
ピンポーン──
そのとき鳴ったチャイムに、ふたりして同時に顔を上げた。
瑠姫「ん……？ 宅配？」
『ううん、たぶん──』
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えり(プロフ) - あぁーもうドキドキが止まりません♡ (5月12日 8時) (
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作者名：はーと。 | 作成日時：2025年5月9日 1時
