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184.変わらない笑顔 ページ34

「頼むな、要!」

「カアア!」


 任務を終えた俺は、久しぶりに生家へ寄ろうと思い、

 千寿郎に伝えるようにと要に伝言を頼んだ。

 順調にいけば昼前には生家へと着くだろう。



 すっかり明るくなった空からは雨は一粒も落ちてこない。


「梅雨の晴れ間か。」


 あたりを見渡せば紫陽花が綺麗に色付いていて、

 昨夜の雨のせいかしっとりと濡れていた。



 生家の前まで来ると、門の外を掃き掃除している

 千寿郎の姿が見えてきた。


「千寿郎、ただいま!」


「兄上!おかえりなさい。

 …Aさん、いらっしゃっていますよ!」


「そうか…!それは良かった!」


 千寿郎は困ったように眉を下げて微笑んだ。

 色々と気を遣わせてしまっているのは分かっている。

 すまない、千寿郎。



 家に上がり、縁側を歩いていると、

 庭先で洗濯物を干しているAが目に映った。



「今日は来てくれていたのだな。

 この家の家事まですまないな!本当に助かる。」



「杏寿郎さん!?

 お戻りになられたのですね。おかえりなさい。

 足音が聞こえず、全く気づきませんでした。」



 不意に後ろから声をかけたので、

 Aはとても驚いた様子だった。


「うむ。ただいま戻った。」


 俺は縁側に腰をかけると、

 蒸し暑さのあまり隊服の上を脱ぎ始めた。



「この頃、随分と蒸し暑くなってきたな。」


「そうですね。少し動くだけで汗が出ます。」


「今日は天気が良いが、すっかり梅雨の時期だな。」



 変わらない笑顔を向けてくれる彼女。

 本当に優しい人だなと思う。



 だからこそ心配になることがたくさんある。




「家と宿舎の往復、辛くはないか?」


「そこまで遠くはないので…大丈夫ですよ。」



 俺は腕を組んで目を伏せると小さく呟くように

 思っていることを口にした。



「…心配なんだ。」


「…はい?」


 たくさん背負いすぎてはいないか。

 あの秋の雨の時もそうだった。

 頑張りすぎて、無理をしすぎてしまってはいないか…




「君はすぐに無理をする。

 周りには大丈夫と気丈に振る舞うが、

 いつその身体が壊れてしまうのではないかと

 俺はいつも心配なんだ。」


 俺の言葉にAは庭に咲く紫陽花をぼんやりと眺めた。

185.濡れた指先→←183.梅雨の鬼狩り



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設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - 美桜さん» ありがとうございます♡ いつもコメントくださり、本当励みになります!これからの煉獄さんサイドの展開もお楽しみくださいね! (2023年2月3日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - こんばんは。お疲れ様です☺︎すみません。私が早とちりしてしまいました。続きドキドキしますが楽しみにしてます。完結まで見守っていきますね!新作もその時はぜひ拝読させて頂きますね♪ (2023年1月25日 22時) (レス) @page50 id: 4bde5e03bb (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 美桜さん» 美桜さん、ありがとうございます♡ 私の書き方が悪くてすみませんが、続編はなく完結いたします!次に移行するという意味でした…!ただ、まだ確定ではありませんが、新作を少しずつ考えていますので…いつかお知らせできるといいです💭 (2023年1月24日 19時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - 更新お疲れ様です!いよいよ完結ですね。最後まで2人の物語を見守っていきます。続編もあるとのことでそちらも楽しみにしてますね☘ (2023年1月23日 22時) (レス) @page49 id: 4bde5e03bb (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 美桜さん» 美桜さん!コメントありがとうございます。こちらこそ、本年もよろしくお願いいたします!更新を待ってくださる方が一人でもいてくださることが本当に幸せです。これからも、ときめく物語をお届けしていきますね! (2023年1月6日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2022年9月6日 22時

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