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169.何度も ページ19

 Aを抱えたまま風呂場へ向かう。

 床の軋む音が廊下に響いていた。



「自分で脱げるか?」


「…はい。」


「何かあったら大変だ。

 俺は風呂場の戸のすぐ側にいるから辛い時は声をかけて。」


 そう言って戸を閉めると、静かに腰を下ろした。


 髪を触ると随分と濡れてしまっていたことに気がついた。

 シャツは肌が透けるほどだ。


「兄上、これをお使いください。

 それからお召し物も。」


「千寿郎…ありがとう。」


 千寿郎から手ぬぐいを受け取ると、髪を拭いた。


「別れの挨拶をしたばかりなのに、

 すぐに戻ってきてしまったな!」


「ふふ。そうでしたね。

 おにぎりを作ったので良かったらお食べください。」

 
「ありがたい。

 彼女が眠りにつくまで付き添うから、

 千寿郎は安心して眠ってくれ。」


 千寿郎は頷くと、静かに自室へと向かって行った。

 


 Aが風呂から出る前にと、

 急いで身体を拭いて着替えた。



「ん?」



 隊服を畳んだ時に、滑らせた指に違和感を感じた。
 
 隊服の胸のあたりにあるはずの第二ボタンが

 取れてしまっていたのだ。


 巡視中にどこかに引っかけたのだろうか。

 確か生家に予備のものがあったはず。

 後で千寿郎に聞いて縫い付けよう。



 ドンッ



 何だ!?


 風呂場の戸の向こうから何やら音がしたので、

 俺は慌てて声をかけた。


「A?大丈夫か?開けるぞ!」


 戸を開けると、Aが床に倒れ込んでいた。


「A!?…A!!」

 必死に呼びかけると、彼女はうっすら目を開けて

「杏寿郎さん…杏寿郎…さん…」

 と、俺の名前を呼んだ。何度も、何度も。

 
 ケガはなさそうだ。


 着替えは済ませていたようなので、

 彼女を抱き上げて部屋へと運んだ。



 ◇



 千寿郎が寝所の準備を整えてくれていたようで、

 褥にAをゆっくりと寝かせた。


 額に手を当てると、とても熱かった。

 辛いだろう。


 冷たい布を当ててあげようと一旦彼女の部屋を出ると、

 庭の止まり木に要がいたので、胡蝶のところへ行き、

 薬が欲しい旨を伝えるように頼んだ。

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設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - 美桜さん» ありがとうございます♡ いつもコメントくださり、本当励みになります!これからの煉獄さんサイドの展開もお楽しみくださいね! (2023年2月3日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - こんばんは。お疲れ様です☺︎すみません。私が早とちりしてしまいました。続きドキドキしますが楽しみにしてます。完結まで見守っていきますね!新作もその時はぜひ拝読させて頂きますね♪ (2023年1月25日 22時) (レス) @page50 id: 4bde5e03bb (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 美桜さん» 美桜さん、ありがとうございます♡ 私の書き方が悪くてすみませんが、続編はなく完結いたします!次に移行するという意味でした…!ただ、まだ確定ではありませんが、新作を少しずつ考えていますので…いつかお知らせできるといいです💭 (2023年1月24日 19時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - 更新お疲れ様です!いよいよ完結ですね。最後まで2人の物語を見守っていきます。続編もあるとのことでそちらも楽しみにしてますね☘ (2023年1月23日 22時) (レス) @page49 id: 4bde5e03bb (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 美桜さん» 美桜さん!コメントありがとうございます。こちらこそ、本年もよろしくお願いいたします!更新を待ってくださる方が一人でもいてくださることが本当に幸せです。これからも、ときめく物語をお届けしていきますね! (2023年1月6日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2022年9月6日 22時

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