検索窓
今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:15,660 hit

168.恋仲でなくとも ページ18

 雨の隙間を縫うように

 要がこちらへ飛んできて小屋の屋根の上へ止まった。


「要、頼みがある。

 生家へ行って、千寿郎に至急風呂を沸かしておくように

 伝えてくれ。」


「カアア」


 要は返事をすると再び翼を広げて飛んでいった。



「雨、弱まってきたな。」


 土砂降りの雨はしとしとと柔らかな雨に変わっていた。


「…本当ですね。」


「まだ多少降ってはいるが、君の体調を考えると、

 そろそろ生家へ行こうと思う。一度降りられるか?」


「はい。」


 俺はおぶっていた彼女を静かに降ろして向きを変え、

 彼女の顔を覗き込み、じっと見つめた。


 辛そうに眉を下げ、顔は赤く、瞳は潤んでいた。


「顔色が見えていた方がいいな。」


 俺の言葉が理解できていない様子のAは首を傾げた。

 彼女が纏っていた羽織と俺の隊服を一度取ると、

 今度は彼女の手に持たせた。


「前で持っていて。」


 虚な目をしたAがしっかりと羽織物を持ったのを

 確認すると、彼女をひょいっと抱きかかえた。


「…わっ!」


 横抱きになり、これなら彼女の顔が見られて安心だ。


「は、恥ずかしいです。自分で歩けますから…」



「何を言っている?

 先程まで立っていることさえやっとだったじゃないか。」



「…でも、私たちはもう恋仲ではないのですよ。」



「そんなこと関係ない!」



 たとえ恋仲でなくとも…君は大切な人なんだ。


 小屋の軒下から静かに歩き出すと、

 涙のように優しい雨がシャツをゆっくり濡らしていく。


 冷たいけれど、そんなのは今はどうでも良いと思う。

 今はただ、彼女の体調を思うばかり。


 大丈夫だろうかと、

 自身の腕の中にいるAに目をやると

 ぎゅっと力強く目を瞑っていた。


「…大丈夫か?」

 相当辛いのだな…

 俺の声に彼女は反射的に目を大きく開くと、

 慌てて目を逸らした。

「…だ、だ、大丈夫です!」

 おかしな反応だ。急いで生家へ…

「もうすぐ着くから、辛抱してくれ…」

 
 

 彼女を抱えたまましばらく走ると生家が見えてきた。

 門の近くに千寿郎が傘をさして立っているのが見える。


「おかえりなさい!お風呂の準備は整っています!」


「うむ!ありがとう!このまま家に上がる!」

169.何度も→←167.あたたかい雨



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (44 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
61人がお気に入り
設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

狐姫(プロフ) - 美桜さん» ありがとうございます♡ いつもコメントくださり、本当励みになります!これからの煉獄さんサイドの展開もお楽しみくださいね! (2023年2月3日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - こんばんは。お疲れ様です☺︎すみません。私が早とちりしてしまいました。続きドキドキしますが楽しみにしてます。完結まで見守っていきますね!新作もその時はぜひ拝読させて頂きますね♪ (2023年1月25日 22時) (レス) @page50 id: 4bde5e03bb (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 美桜さん» 美桜さん、ありがとうございます♡ 私の書き方が悪くてすみませんが、続編はなく完結いたします!次に移行するという意味でした…!ただ、まだ確定ではありませんが、新作を少しずつ考えていますので…いつかお知らせできるといいです💭 (2023年1月24日 19時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - 更新お疲れ様です!いよいよ完結ですね。最後まで2人の物語を見守っていきます。続編もあるとのことでそちらも楽しみにしてますね☘ (2023年1月23日 22時) (レス) @page49 id: 4bde5e03bb (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 美桜さん» 美桜さん!コメントありがとうございます。こちらこそ、本年もよろしくお願いいたします!更新を待ってくださる方が一人でもいてくださることが本当に幸せです。これからも、ときめく物語をお届けしていきますね! (2023年1月6日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2022年9月6日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。