検索窓
今日:3 hit、昨日:2 hit、合計:51,239 hit

32.桃色の肌 ページ32

「煉獄さん、Aです。


 入ってもよろしいですか?」


 お風呂から上がったAが襖越しに声をかける。


「うむ。入っておいで。」


「し、失礼します。」


 行燈の灯りが優しく、あたたかく、部屋を照らす。


 お風呂上がりの彼女は


 白い肌を少しだけ桃色に染めて


 それがなんとも色っぽくて、素直に美しいと思う。



「A、ここへ座って。」


「…あ、はい。」


 Aは俺に背を向けて座った。


 彼女は美しい上に、謙虚な人だ。


 こんなに素敵な女性を男が放っておくわけがないだろう。


 だから、ひとつだけ確認しなければならない…


 背中といえども、男に肌を見せるんだ。


 失礼のないように努めたい。




「覚えている限りで構わない。

 君は夫や恋人はいるのか?」



 なぜか"いない"と言ってはくれないかと

 淡い期待をしてしまう。




「や…、いなかったと思います。」


 "いない"のか…


 それはそれで背中に傷を負わせてしまったことに

 罪悪感を感じた。




「そうか…。

 嫁入り前に傷をつけさせてしまったな…。

 申し訳ないな…。

 薬を塗るから、少しだけで構わない、傷があるところまで

 浴衣を脱いでもらえるか?手短に終わらせる。」



 Aはそっと浴衣を肌けさせた。

 
 傷を見るだけで、その背中の痛みが

 どれほどの事だったのかが伝わってくる。



「すまないな。少し待っていてくれ。」


 俺は軟膏を指ですくうと、

 痛まないよう、優しく背中に薬を塗り始める。


 するとAはくすぐったいのか、時々身を跳ねらせる。




「…んっ」



 微かに聞こえた艶のある声に


 思わず指が止まってしまった。




「ははっ、くすぐったいのか?


 …早くこの傷が治るように


 俺がまじないをかけておこう。」




 薬を塗り終えると、Aの後ろから


 そっと浴衣を羽織らせる。



 彼女のうなじに顔が近づいた時、


 一瞬、柔らかないい匂いがした。




 
「ありがとうございます。」




「うむ!」



 

33.寄り添いたい→←31.気がかりなこと



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (136 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
220人がお気に入り
設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

狐姫(プロフ) - misakimiさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!様々な行動の裏の心情が少しずつ見えてくるかと思います!お楽しみくださいませ(*˙˘˙*) (2022年1月8日 13時) (レス) @page43 id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - 煉獄さんの、自分の心の動きについていけてない純朴さたっぷりの初々しさよ。今日も素敵!一週間のご褒美戴きました! (2022年1月7日 22時) (レス) @page42 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - misakimiさん» 読んでいただけて嬉しいです!辛く悲しい気持ちがありつつも、彼女への愛は変わらないのです。彼の心情の変化を追いながら物語を楽しんでいただけたらと思います!いつもありがとうございます( ˊᵕˋ ) (2022年1月1日 16時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - 大正時代の煉獄さんの心の動きが、はっきり分かりますね!今後、惚れていく訳ですから、読み返すと、更に煉獄さんの辛さが際立ってしまうのでしょうね。今から泣けそう。 (2021年12月31日 19時) (レス) @page34 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - 前回コメントしてから時間無く、今日15話。うっわ〜、苦しい。煉獄さんの心情を慮ると、涙。愛を誓った人に知らない人扱いされる絶望感。怖いでしょうに、それでも前を向いて、進もうとするのですね。 (2021年12月31日 19時) (レス) @page15 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2021年12月13日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。