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12.頼みの綱 ページ12

店の中へ入ると、

 君は店内を見渡す。



 どこか懐かしいような古き良き

 日本の和のテイストも残されているこの店は、

 創業は大正時代にも遡る。



 無論、大正時代は今のようなカフェではなく、

 羊羹などの和菓子をメインとした甘味処だった。




「煉獄先生はよくこちらへ?」


「うむ!学生の時からよく来ている。

 生家から近かったのでな。」


 この場所も覚えていないのだな…


「そうなんですね、とても良いところですね!

 なんかこう…改装されていて綺麗なのですが、

 どこか懐かしいような雰囲気があって…落ち着きます。」


「それは良かった。」


 ぎゅっと締め付けられる心を悟られないように

 笑顔を向けた。



「…あの、今日はお誘いいただき、

 ありがとうございます。」



「いや、むしろ来てくれて良かった!

 最近頑張りすぎているように見えて、

 少し心配していたんだ。」


「私元気ないように見えていましたか…?」


 Aは首を傾げて俺を見つめる。


「うーん…むしろ元気に頑張りすぎていて、

 見ていて心配になったんだ。俺は知っているぞ?

 君が気を回して職員室の給湯室の掃除をしていることや、

 玄関の花の手入れを欠かさずにしていること。

 俺はちゃんと知っている。」



 君が頑張っているところ、

 細やかな気遣い、

 君はいつだって見えないところで

 人を支え、癒している。



「…そんなっ…大したことないですよ!」

 
 俺の言葉にAは頬を赤く染めて、謙遜する。



「いや!君は頑張っている。

 うちの学校には保健室登校の子もいるだろう。

 その対応だって大変なはず。一人で抱えないで欲しい。

 俺を頼って欲しい。

 君の力に俺はなりたいと思っている!」



 いつだって、君の1番の味方でいたいんだ。

 たとえ、君が俺を知らないとしても…




「…嬉しい…嬉しいです。」


 白く柔らかそうな頬に

 美しい涙が伝っていく。

 照明の光を集めてキラキラと光る雫…



「私…煉獄先生にたくさん救われているんですよ。

 ありがとうございます…」


 
 ああ、Aの頬を伝う涙を拭えることが

 どんなに幸せか…



 なあ、A。

 これが最後の頼みの綱なんだ。


 どうか…



 俺はおもむろにAにハンカチを差し出した。

13.燃える思い→←11.待ち侘びた日



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設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - misakimiさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!様々な行動の裏の心情が少しずつ見えてくるかと思います!お楽しみくださいませ(*˙˘˙*) (2022年1月8日 13時) (レス) @page43 id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - 煉獄さんの、自分の心の動きについていけてない純朴さたっぷりの初々しさよ。今日も素敵!一週間のご褒美戴きました! (2022年1月7日 22時) (レス) @page42 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - misakimiさん» 読んでいただけて嬉しいです!辛く悲しい気持ちがありつつも、彼女への愛は変わらないのです。彼の心情の変化を追いながら物語を楽しんでいただけたらと思います!いつもありがとうございます( ˊᵕˋ ) (2022年1月1日 16時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - 大正時代の煉獄さんの心の動きが、はっきり分かりますね!今後、惚れていく訳ですから、読み返すと、更に煉獄さんの辛さが際立ってしまうのでしょうね。今から泣けそう。 (2021年12月31日 19時) (レス) @page34 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - 前回コメントしてから時間無く、今日15話。うっわ〜、苦しい。煉獄さんの心情を慮ると、涙。愛を誓った人に知らない人扱いされる絶望感。怖いでしょうに、それでも前を向いて、進もうとするのですね。 (2021年12月31日 19時) (レス) @page15 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2021年12月13日 19時

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