QuizKnock"ライター"の伊沢です ３

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「あ！ 今日はよろしくお願いします！」


お洒落な外観の建物の前、お洒落な人がこちらに軽く手を振りながら近づいてくるのを見つけて声を出す。

視界には見たことのない素敵な靴が入る。そこで今自分が、川上さんが言うには"いつも通り"の深いお辞儀をしていることを自覚した。うーん、完全に無意識。

え、靴めっちゃ素敵……。これが美術品？ コンバース？ 浅はかな知識が頭の中を巡る。スニーカーのブランドコンバースしか知らないことある……？ まずスニーカーのブランドで合ってる？


「えっと……お辞儀長くない？」


少し困ったようなトーンで声をかけられ、自分がお辞儀する目的を挨拶から靴を見るためにしていることに気づく。


「すみません！ お洒落なスニーカーだなと思いまして!!」

「お、ホント？ ありがとう。んー、じゃあ早速だけど中入っちゃおうか。早く終わった方がいいもんね？」

「いえ、楽しみにしてたんで！ 長くなっても平気です！ いい記事書きましょう！ 志賀さん！」


美術館の前で、志賀さんと待ち合わせをしていた私は財布から2枚の綺麗なチケットを取り出す。

神から貰った紙……なんでもない。

河村さんの心に語りかける作戦は見事に刺さった。悲しそうな表情を浮かべ、長いまつげで影ができるくらいに俯き美術館のチケットを見つめる河村さんがそういう演技だとわかっていながらも思わずチケットを受け取ってしまった。

私の手にチケットが収まると先程までの表情は嘘のように、というか嘘だったんだけど。明るく、いかにも悪巧みが成功しました！ みたいな顔をしながら目を合わせた。

｢来週の木曜日暇だよね？｣とどこから聞いたのか私の暇な日を言い当てながらスマホを手に取り液晶画面を操作する。

問い詰めると｢伊沢が言ってた｣と。確かに！ 私は拓司に撮影やら何やらの用事があると困るからと1日中暇な日は伝えてあるけど！ 社員の秘密守られて無さすぎてる……。

そう思ってももう遅く、受け取ったチケットと河村さんが取り付けた志賀さんとの約束の2つが揃った以上行かないわけにもいかず、当日。

楽しみにしていなかった訳では無い。大好きな『オタクはデートには行くな』の続編を任されているし、志賀さんのお話が聞けるわけだし、どちらかと言うと楽しみにしながら電車に乗り美術館まで来た。


志「気になる絵とかあったら言ってね」


｢全部説明出来るかは分からないけど……｣と、不安そうな笑みを浮かべ歩く志賀さんの隣を歩いた。

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