泣き虫少女と盗賊団 (ページ22)

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Episode169 ／ゾルディック家ページ22

私は直ぐに、近くの窓から外の森へと逃げた。

イルミに言われたのだ。

｢あ、母さんにだけは見つからないでよ。…Aも分かるでしょ、絶対めんどくさい事になるから｣

確かに、キキョウさんなら有り得る。

目隠しがない時は基本絶をしているから、キキョウさんにバレてる、ってことはないと思うけど。

でもキキョウさんのあのスコープは、どこでも見ることが出来る。

少なくとも、屋敷内の誰かと接触するのは避けた方がいいかなー…

とりあえず、森の木の上を移動して、ゾルディック家の２階へ侵入させてもらう。

この階は私やキル、カルトの年下組の部屋がある場所。

ちなみにイルミやミル兄…ミルキは下の階だ。

一応…っていうか、元自分の部屋がどんなふうになっているのか気になって覗いてみることにした。

多分もう何も残ってないだろうけど。

『…失礼します』

ガチャっと扉を開ければ、5年前と変わらぬ部屋があった。

とにかく私の部屋は質素だ。

黒の大きいベッドとドレッサー。

あとは…キキョウさんが私に与えてくれた大量のドレスたちが収納されたクローゼット。

『…何も変わってないね』

すっ、と後ろで空気が揺れる気配がして声をかけた。

｢帰ってくると思ってるから。親父も母さんも｣

『…血、繋がってないのにね』

｢……兄妹としてじゃなくても、ね｣

ちょうどその時、外でミケの遠吠えが聞こえてイルミが何を言ったのか聞き取れなかった。

『…ごめんなんて言った？』

｢何も言ってない｣

嘘つけ。

その後何度聞いても、イルミが答えてくれることは無かった。

この時聞いていれば……少し未来は違ったかもしれない。