第九十四話 ページ49
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私が目覚めて五日後
軽いリハビリをして一人でも動けるようになった時、御館様から緊急の招集がかけられた。
ついにこの日が来た。
毎日のように私の部屋に来てくれるみんなは、一切あの日の話をしないし…結局どうなったの、なんて私から聞くこともできないし。
みんなの気遣いが嬉しいと感じると共に、もどかしさもあった。
目覚めてすぐ、お館様の所に参ろうとした私を止めたのは他でもない、お館様であった。
「十分に体を休めてからおいで。無理をしてはいけないよ」
しのぶちゃんづてにそう言われてしまえば、従わないわけにはいかない。
本当はすぐにでも謝りたかった。
いつかの時と同じように、招集された時間よりも幾分と早くお館様の元へ参る。
出迎えてくださったあまね様とくいな様にぎゅっと抱きしめられて思わず泣いてしまいそうになった。
産屋敷家には、小さい頃からお父様に連れられてお世話になっている。
鬼殺隊に入る前から、お母様を失った私には鬼殺隊のみんながいた。
「Aだけ」
私だけ
トキの声が聞こえた気がした。
昔の夢を見たあの日から、私の中にトキが住みついている。
「どうかしましたか?」
あまね様の声にはっと我にかえる。
『ご心配ありがとうございます。大丈夫です。お館様はいつものお部屋でしょうか?』
うなづいたあまね様の心配そうな目を見なかったことにして、私は屋敷の奥へと足を進めた。
『お館様。Aです』
「入っておいで」
久方ぶりのお館様の声
少し緊張して、襖を開ける手が震えた
部屋に入ってすぐ、私は足を止めた。
謝らなければ、いけない
日天さんの策にまんまとはまったこと、迷惑をかけたこと
そして……トキが…姉が、鬼殺隊を裏切った原因が私にあることを
謝らなければ
少しの逡巡のあと、私が口を開く前に
「A、こっちにきて座りなさい」
『お館様、私は…』
「A」
有無を言わさぬ声音
渋々と、お館様のすぐ前に敷かれた座布団へと腰を下ろした。
「色々な子たちから話はきいているよ。災難だったね」
「違うんです、お館様…私がもっと、注意をしていれば」
「怪我がまだ癒えていないのに呼び出してしまってすまないね。会議が終わったらまたしばらく休養に」
『お館様!』
あぁ…無一郎がいたら私、殺されてるかも
それくらい無礼なことをしている自覚はあった。
それでも、言わなくちゃいけないと
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キメツ推し - 面白かったです!パスワードを知りたいです (3月29日 12時) (レス) @page50 id: 267e3fd993 (このIDを非表示/違反報告)
さくら - めっちゃ面白かったですパスワード教えていただけると嬉しいです (3月1日 20時) (レス) id: a79ca47ff6 (このIDを非表示/違反報告)
さくら - とても面白かったです!パスワード教えていただけると嬉しいです (3月1日 20時) (レス) @page50 id: a79ca47ff6 (このIDを非表示/違反報告)
うらら - とっても面白かったです!パスワードを教えていただけると嬉しいです! (12月17日 22時) (レス) @page50 id: 5151e61b26 (このIDを非表示/違反報告)
えー(プロフ) - 面白すぎて一気に見てしまいました!パスワードを教えていただければさいわいです! (11月26日 21時) (レス) @page50 id: 9a652782c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白米 | 作成日時:2020年2月17日 22時