『インモラル 3』

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紅葉のトンネルは結構長くて、出口に出る頃には新しい靴のせいか足が痛くなってきてしまった。

「Aちゃん、どうかした？」

歩き方がおかしくなる私を気にしてくれる藤ヶ谷さんに申し訳なくなった。

紅葉見に行くんだから、履き慣れた靴にすれば良かった…。

「足痛いの？」

「大丈夫です。すみません…」

スニーカーで来いよって感じだよね。

「休憩しようか」

「いいです、時間ないし歩かないと全部見れないし」

「…」

足痛いのに全部見たいとか、わがままだよね…。

藤ヶ谷さん黙っちゃった。

「…ごめん、ちょっとあそこ寄らない？」

藤ヶ谷さんが指差す先には、暖かさを感じる小さいお店が。

【炭焼自家焙煎珈琲】って書いてある。

「コーヒー飲みたくなっちゃった。いいかな？」

「はいっ！」

良かった。ここなら座れるからちょっと足も休めれるし、コーヒーもすごく美味しそう。

この珈琲店にはテラス席があり、川の向こうの山のほうまでよく見えた。

「すごいですね、これなら向こうまで行かなくてもここからよく見えるっ」

「そうだね」

微笑む藤ヶ谷さんの後ろには紅葉の絶景。

あ、また写真撮りたい！

「写真、撮りたい…」

「また？」

「だって藤ヶ谷さん素敵すぎるから。なんなら藤ヶ谷さんフォルダ作りたいです」

顔をひきつらせる藤ヶ谷さん。

あ〜、ひいてるひいてる。

「ラブラブですね〜」

お店の人がクスクス笑いながらコーヒーをテーブルに置いた。

「すみません…」

はしゃぎすきたかな、藤ヶ谷さんも恥ずかしそう。

「でも写真っていいですよね。記憶は色褪せていくけど写真があればいつでもその時の楽しかった時に戻れるから」

少し寂しそうにその店員さんは笑った。

「私もそう思います…」

この先、必ず藤ヶ谷さんとさよならする時が来る。

そうなった時も思い出の物や写真があれば頑張っていける気がするから。

「Aちゃん？」

下を向く私を心配そうに見つめる藤ヶ谷さん。

「良かったらこのお席で一緒に写真撮りますか？私撮りますよ」

店員さんが言ってくれたけど、藤ヶ谷さん恥ずかしいよね。

「ありがとうございます。お願いします」

だけど藤ヶ谷さんが店員さんにそう言ってくれた。

「いいんですか？」

「いいよ、撮ろう」

藤ヶ谷さんの近くに座り直して写真を撮ってもらった。

テーブルの下で手を繋いで。

幸せすぎて、バチが当たるんじゃないかって思って怖くなった。

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