『インモラル 3』

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「藤ヶ谷さんにチューしたいです…」

「運転中は危ないからダメ」

「藤ヶ谷さんは動かなくていいからいいでしょ」

「ダメ」

「何でですか」

「…Aちゃんからキスされて気にせず運転するのなんか無理だから」

何でわかんないの、って顔を少し赤くする藤ヶ谷さん。

「頬っぺただよ？」

「頬っぺたでも、動揺しちゃったら危ないから。…も〜、言わせんなよ恥ずかしいなぁ」

「…藤ヶ谷さん、顔赤いですよ」

「知ってる」

藤ヶ谷さんが私の言葉や行動に動揺してくれるの嬉しい。しれっとされるとほんとに好きなの？って思っちゃうし。

「…藤ヶ谷さん、私、言葉って不思議だなって思うんです」

「どうして？」

「例えば同じ可愛いって言葉でも、玉森くんに言われた時は嬉しいな、っていうくらいだったけど、藤ヶ谷さんにさっき言われた時は胸がキュンキュンして仕方なかったから」

「…うん」

「だから藤ヶ谷さんの可愛いのほうが、っていうか、比べられないくらい嬉しかったです」

「そっか」

柔らかく微笑む藤ヶ谷さんを見て私も笑った。

「私、今日が楽しみすぎて、本買っちゃったんです」

今日行く場所が載ってる雑誌を鞄から取り出した。

「そうなんだ、また後で見せてね」

「はいっ」

「まだまだ着くまで時間かかるし、寝ててもいいよ？」

「やです！せっかく一緒にいる時間なのに寝ちゃったらもったいないし」

「なんだ、残念」

残念？

「…お喋りしたくないの？」

「いや、違うよ。Aちゃんの寝顔見てみたいなって思ったから」

「やです！」

「何で、いいじゃん見たい」

「だってひどい顔して寝てたら…」

「いいよ別に」

「絶っ対いや」

「…あ〜あ。Aちゃんの寝顔見れる日くるのかな、俺」

「ありますよ！旅行に行く時とか」

…でも実際厳しいだろうけど。

みっくんがお泊まりを許してくれるとは思えない。

ていうかみっくん残してお泊まりしたことなんてないし。

「お泊まりでも見れなさそうだけどね」

「…何で？」

「寝かさないから」

何やら黒い笑みの藤ヶ谷さん。

「へ？」

…あ、そういうこと？！

一気に顔が熱くなった。

「寝なきゃダメですよ…」

「やだ、寝ない」

この人はっ！

「…いつか、行けるかな。旅行」

私が呟くと藤ヶ谷さんは前を見たままはっきりとこう言った。

「絶対行けるよ」

それはほんとにそう思ってるのか、その場しのぎの言葉なのかわからないけど。

その言葉に、すがりたくなった。

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