『インモラル』

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午前中は家事で潰れちゃったから、午後は一人でお買い物。

まだ夏なのにお店にはもうシックな秋服が並んでいる。

街中をブラブラ歩いてると、同じ職場の先輩からLINEがきた。

《今日高城出版さんの新しい担当さんが挨拶に来るみたいだけど、案内とかもらっとけばいい？》

う〜ん、ちょっと発注したいかも。

《近くにいるので行きますね》

街中の本屋さんの児童書売り場を担当している私。
出版社さんがちょくちょく営業に来るんだけど、一番よくくる高城出版さんがどうやら担当が変わったみたい。

駅前にある職場へ向かう途中、スマホを見ながら歩いてしまったせいで、誰かにぶつかった。

「きゃっ」

「うわっ」

ぶつかった拍子に自分の鞄の中身をばらまいてしまった。

「ご、ごめんなさい…」

完全に自分が悪いから頭を下げて、中身を拾い出すと、その人も拾うのを手伝ってくれた。

長い指先が綺麗で思わず見とれてると、動きが停止した私を不思議に思ったのか、「大丈夫ですか？どこか痛みます？」と声をかけられ、慌てて顔を上げた。

「大丈夫です…」

顔を見て更に私は固まってしまった。

この人、すごくかっこいい。

急に顔がかぁっと熱くなる。

「顔、すごい赤いけど、ほんとに大丈夫…？」

ものすごく心配そうな顔をして私を見るイケメンさん。

「はいっ、あの、ほんとに大丈夫です…すみませんでした！」

鞄に落ちたものを詰め込んで、慌ててその場を去った。

…スーツだったから、会社員？
スーツでもすごく色気があって、でもきちんと清潔感もあった。

あんな至近距離でかっこいい人と見つめあったの、初めてかも。

…いやいや、ダメだよ。私にはみっくんがいるじゃない。

歩きながらふと振り返ると、イケメンさんもこちらに歩いて来てたから、慌てて前を向いた。

何分かしてまた振り返ってみると、まだ後ろをついてきてる。

な、何？！

歩いても歩いてもついてくるイケメンさんが段々不気味になってきた私。

ま、まさか慰謝料とか取られる…？

ついに職場に着いたけどイケメンさんも来たからさすがに立ち止まって声をかけた。

「あ、あのっ！」

「はい」

「何か御用ですか？！」

「え？」

「ずっとついてきてるし…文句があるなら言って下さい！」

キョトンとするイケメンさん。

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