キャットラビング×藤ヶ谷 太輔 ページ14
玄関のカギが開いて、こちらに向かう足音。
そしてリビングの扉が開かれて、
私を見下ろすその冷たい顔を見つめて、
───ああ、今日も痛くなりそう。
少し機嫌の悪そうな顔の彼を見て、そう悟った。
2017年。
その頃の私はその日暮らしをするフリーターで。
友達に教えてもらった、芸能人がよく集まるというお店に興味本位で訪れた。
治安はそんなによくなさそうだけど、どこかこの歪んだ空間が気持ちよくて、私はこのお店の虜になった。
「ね、あれ○○○○の○○じゃない？」
「え、どれどれ」
友達が指を指す方に目を向けると、眉間にシワを寄せてどかっとソファーにふてぶてしく座っていた。
「なんか感じ悪いね」
「……そうだね」
だけど、その機嫌の悪そうなカオが、たまらなく私をゾクゾクさせた。
もちろん彼女がいるらしくて、全然相手になんかされなかったけど。
ものすごく機嫌の悪い日があって、荒れに荒れてしまった彼を見て。
今ならいけるかもしれない。
そう思った。
もちろん太輔は私になんか1ミリも恋愛感情を抱いていなかった。
「優しくないけどいーの？」
「うん、優しいオトコとか全然興味ないから。好きにして？」
「ふぅん。ま、めちゃくちゃ胸糞わりぃから丁度いいわ」
テレビで見るような優しさの欠片は全くなかった。
欲望のままに、いいように私を弄ぶ。
「っあー……、首締めるとナカ締まってめちゃくちゃ気持ちいいな」
苦しくて、痛くて。
だけど私は幸せだった。
ようやく彼に近づくことができたから。
彼女は太輔のこういうところが無理で逃げ出したらしい。
今でも彼女のことが忘れられない太輔は、
「なんでもっと可愛くなれねーの？」
「あの子みたいにさぁ、もっと良い声で啼いてよ」
そんな風に前の彼女のことと比べてくるから。
私は必死に彼に気に入られるように、痛む身体に鞭をうって精一杯応えた。
だけど痛いのは辛くて。
泣きながら懇願する時もあった。
「い、痛いのいやっ……、う、やめてぇ」
快楽と痛みで視界が滲む私の顎を掴むと、蔑むように笑う太輔。
「痛いことがいやだなんて、よくそんなカオして言えるよな」
「あああっ」
突き抜けるような快感と同時に噛み付かれた肩が痛む。
だけど、私の頬にそえられた太輔のあたたかい手のひらが、私はどうしようもなく好きだ。
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作者名：ayachoko
| 作成日時：2023年5月9日 21時
