正しいと間違いは紙一重？ ページ44
＜東谷目線＞
かれこれ数日間は歩いた。山をずーっと歩いていると曜日感覚も、何もかも狂ってしまった気分になるものだ。良く私よりも年下なのに杉元もアシリパも頑張るもんだ。とっても辛いのにねぇ…。
｢今日って何日だったかしら……」
｢東谷ぃ…それを聞くのは三回目だぜ｣
｢そうだっけ？｣
杉元に教えられたが、生憎とそう言った回数は覚えてない。あーあ、どこかに家とかご飯とかあれば良いのに…。
｢あ、おい！あんな所にアイヌの村があるぜ｣
何と言う偶然。きっと神が日頃の行いが良い私への御褒美にと下さった運命だ。そうに違いない。
けれど、アシリパが何やら不安そうにしている。どうやらここらの村は知らないようだ。まぁ、そんなこともあるって、と慰め(？)ながら私達はその村に立ち寄ろうとした。
｢あー、生活感！！｣
｢生活感あるって素晴らしいわぁ…｣
｢阿保かお前…何気ぃ抜いてんだ｣
｢むっ、なによ尾形の馬鹿！｣
そこまで言わなくたって良いじゃないか、と半ば愚痴るように言えば彼は、ふんっ、と笑い頭を撫で整えながらどこかへ行く。また行くのか、と思っていると帰ってきた。
まぁ、何でも良い。取り敢えず村の住人に話を聞こうとする。けれども、その前に村長と名乗る男が現れた。名をエクロクと言うらしい。アシリパはやっぱりどこか不安そうだった。
｢アシリパちゃん、どうしたのよ｣
｢……東谷か、実はな、アイヌには狩りでとれた子熊を育てると言う習わしがある｣
｢子熊を育てるには、丁度あそこにある檻を使うんだ…だが…｣
｢どう、考えても……毛玉？毛玉詰めてるのかしら？あれは」
そう、アシリパが指を向ける方向には檻一杯に詰め込まれた毛玉。あれが熊と言うものか？生きてるのだろうか…。確かに、少し不自然かもしれない。それを聞くとエクロク村長は
｢あぁ、子熊の成長速度が早くて…もうすぐ取り替える所だったさ｣
と、語った。
まぁ、それなら仕方ないよね！って視線をアシリパに向けると、アシリパは何か考え込んでいた。アイヌ文化は知らないので、ここはアシリパに任せよう。うん、そうしよう。私はご飯が食べたいんだ。
そこから、アイヌの風習だとか何とかで、村長の家に入るまでに数十分はかかったと思う。それまで、尾形が蝶を追いかける姿を眺めたり、牛山の修行、練習を眺めていたり、杉元と蟻を眺めたりと、いろんなものを眺めた。
あぁ、これなら悟りが開けるかもしれないなぁ……
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作者名：文揚げ | 作成日時：2021年10月4日 17時
