[閑話]道思わぬ側面 ページ18
東谷は、耐えていた。
「…」
「…」
この誰も喋らない道のりに、耐えていた!
脱走してはや1日が経過した尾形一同。その1日、殆ど何も話していないのだ。唯一喋ったと思えば指示を出す事のみ。なんたる苦痛だ。
「ねぇ、貴方達はスキンシップと言う言葉をご存知で?」
「外来語?」
二階堂が少し反応したが、尾形は沈黙を決め込む。
「要は、少しくらい会話しなさいって事よ」
「会話ねぇ…」
うーん、と歩きながらも少し考える素振りを見せた二階堂。尾形は我関せずを極めている。
「会話の種が無いんだよなぁ」
「だって、ほら…あの尾形上等兵殿だから」
「確かに、それもそうね」
「やかましい」
納得した様子の東谷、内緒話風に話す二階堂。少し苛ついた尾形。
「尾形上等兵殿、此処等で少し休まない?」
「………好きにしろ」
東谷は近くの木に寄りかかり、二階堂は寛ぐ様に座る。
そこからは半ば尾形の愚痴になっていく。
「尾形上等兵殿はあんな性格だから人間関係はあまりない」
「Aはどうなんだ?」
「そうねぇ…北海道に来てからは未だ、一人か二人くらいね」
ふと、東谷と二階堂は尾形をチラリと見る。
尾形は、蝶を追い掛けていた。届きそうになると手を動かすが、身長も含めて届かない所へ飛んでいってしまう。
「「ね、猫…?」」
思わず二人して悶える。いつものクールで人を小馬鹿にする尾形とのギャップが凄まじいのだ。
因みに、蝶飛んでいってしまうと丁度空を飛んでいた鳥を撃ち、此方に歩いてきた。
「……鳥」
「だから言葉足らず過ぎるわ…調理すれば良いのよね?」
こくん、と頷き焚いた火の側で小さくなってしまった。
ご飯は中々美味しく出来たと思う。
分かった事と言えば、二階堂は意外と良い子で、尾形は猫。
因みに、次の日には会話がなくなっていた。
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作者名:文揚げ | 作成日時:2021年10月4日 17時