教えてあげて、サルトルさん【五条悟】

再会 ページ5

◇









ホテルにて。


予約してあったらしいツイン部屋に、悟と泊まることになった私は、場違いなウェディングドレスのせいで好奇の目に晒された。









「…とにかく。悟さんには話をしに行かなきゃ」


「あ？行かなくて良いだろ」




俺あいつキラーイと平気で言い放つ悟は、もうあの男は他人だなんて鋭い視線を送ってくる。








どうしたら、こんなにも自分勝手な人間が育つのか…






そんな誰もがツッコんできそうなことを考えていれば、悟がいきなり苛立ったように髪をかきあげる。









「おいA。それ早く脱げよ」





そして、不快そうに私の服を指さす。



まるで視界に入れたくないとばかりに、おかしな首の角度で窓を見る悟に、昔と変わらないお子ちゃま振りだなと私は少し笑ってしまう。









「あのね。万年思春期の悟には悪いんだけど

このドレス一人じゃ脱げないんだよね」



「…は？」









◇









「…もう寝る。」




明日からのことは明日考えよう。



ドレスを脱ぎ終わった…というか、ホテルのスタッフさんたちに脱がせてもらった後、風呂に入る気力すら無くなった私は、思い切りベッドに横たわる。




今日のことは一先ず忘れて、もう思いっきり寝てやろうと瞼を閉じれば、何故かすぐ隣のスプリングが沈んだ。









「…思春期は終わったんですか、悟クン」


「絶賛思春期中」






じゃあ自分のベッドで寝ろよ。と悟の体を足で押しながら言えば、パチリと瞼が開き、子供の頃と変わらない澄んだ瞳が私を捕える。









「まだ。お前の気持ち聞いてないんだけど」





昼間の威勢はどこへ行ってしまったのか、8年前、別れ際で見せた縋るような表情をする悟に、私は恨めしくなって目を逸らす。









「…悟は私にとって

親友っていうか、弟みたいなもんだよ」








昔からずっと、誰よりも大切に思ってきたんだから。









「あっそ。」









・

友達→←再会

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す