好きだった人と、好きな人。【そらちぃ・エイジ】

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エ「もう、飲まないなら返して」

しばらくして聞こえてくる声




「・・・あったまっちゃったよ」

エ「いいよ」


またジュースがえいちゃんの手に渡る


触れそうで、今度は触れなかった
指先を
自分で握りしめながら思う



グレープよく飲んでたじゃんって
私がグレープ味を飲むようになったのは
いつもえいちゃんが飲んでたからだよ


体育の後、お昼の時間、朝練の後、放課後


いつだって下駄箱のところの
自動販売機で紙パックのグレープジュースを
買って飲んでいた、


みんなペットボトルを買う中
えいちゃんだけはいっつもいっつも
一日に何回もグレープのパックジュースを
ストローから美味しそうに飲んでいたんだ



それを真似して、私も買うようにしたの。



同じの飲んでるよって、気づいて欲しかったから。




「・・・えいちゃん昔から好きだよね
グレープジュース」

エ「うん、好き」

「・・ね」



ミラー越しにこちらを見た
えいちゃんが ベーと舌を出す
紫に染まった舌を見て
思わず吹き出してしまった




「あははっ、やっぱ面白いそれ」



エ「お前だけだよ、こんなんで笑うの」

ふふ、とえいちゃんからも
笑い声が聞こえてくる



そうだった、
無邪気なその顔が可愛くて、おかしくて
お腹を抱えて笑う私に
えいちゃんは何度も何度もベーとやって見せてきていた




「ははっ、あ〜、懐かしい 笑」



目尻に溜まった涙を
指ですくう



へんなの、なんだか今
一瞬だけあの頃に戻ったみたい。

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