好きだった人と、好きな人。【そらちぃ・エイジ】

26（エイジside) ページ27

はぁ、と息を吐いて
意を決したように話し出した




「好きだったんだ、えいちゃんのこと」



小さく聞こえたその声に
不思議と驚きは感じなかった。



エ「なんか、知ってた気がする」



「うん、だと思った」



感じていた。
彼女が俺に好意を抱いてること



俺も素直で人懐っこいAを
いいなと思っていたのも確か。



「これは、あの時の私からね」



そう言って
なんのことだともう一度顔を向けると




そっと両頬が挟まれて
甘い香りが強くなる



一瞬だけ触れた唇と唇は
どっちからもグレープの味がした



すぐに離れていく
サラサラの髪を



掴んでみたくなる。



でも手を伸ばすより前に
その髪はふわふわと離れていってしまった。





切ない、
色々な場所でよく耳にする言葉

曖昧でわかりにくいなぁって思ってたけど
きっと、こういうときの事を言うんだと思う



今この瞬間は とても切ない



コップを持ってキッチンへ戻った
Aは
何事もなかったかのように
長い髪を耳にかけた



これで彼女がスッキリするなら
別にいい



「ごちそうさま」



俺も飲み終わったコップを
机の上に置いて腰を上げた。



「帰るね」



そう言えば、Aは
気をつけて、と手を振ってくる。



少し肌寒い夜空をほんの少し扇いで
車に乗り込んだ



アクセルを踏んで走り出した時
ミラーに映る彼女の姿
ひらひらとこちらに向かって
手を振っている



キスしといて、ふざけた人だ



しょうがないからプッと一回
クラクションを鳴らしてやった。

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