愛は故郷にありました。 (ページ6)

今日:12 hit、昨日:107 hit、合計:480,436 hit

島の噂ページ6

和サイド

患「なあ和、Aが戻ってきてるって知ってたか？」

これで一体何人目...
俺は島の情報屋じゃないしAの家族でも彼氏でもないんだから知ってるわけないだろう。

「知らされてるわけないでしょ俺が。」

患「そっか。なあんだ、つまんねえな。和なら何か知ってると思ってわざわざ来たのに。」

青木のおじさんに至っては俺のこと、和って呼ぶからね。

「Aのこと聞くためだけに来たの？どこも具合悪くないのに？俺はねそんな暇じゃないんだよ。そういえば先月気管支炎なってたよね？その後はどう？」

患「一丁前にお医者さんみたいなこと言いやがって。」

だから俺は10年もこの島でこの診療所切り盛りしてるんだって。
この見た目のせいなのか？確かに白衣も着てない。基本はチノパンに夏はポロシャツ冬はパーカー。

「一丁前なんですぅ俺は。ほら、ちょっと前まくって。念のため診ておくから。」

患「はいはいわかりましたよ、和せんせ。」

青木さんもからかうような顔で俺を見るんだから。

「深呼吸してくださーい。ゆっくりね、はいすってーはいてー。」

両肺も気管支もすっきりときれいな呼吸音で安心した。

「はい完全にきれいに治ってるね。良かった。暑いからしっかり水分補給しながら仕事してよ。できたら日中は屋内でって言いたいけど畑あるもんね。くれぐれも気を付けてね。」

患「俺のことは良いからさ、Aのとこ行ってやれ。一人でこの時期に島に戻ってくるなんて珍しいだろ。何かあったのかもしれないし。」

「もうね散々みんなから言われたから。往診の帰り道によることにしたの。」

患「そっかそっかそしたら安心だあ。よろしく頼んだぞAのこと。」

青木さんはAのお父さんと友達だったからAが幼いころからよく知っていて。
面倒見の良い親戚のおじさんて感じ。

青木さんを見送ってから往診用のリュックを背負い鏡の前に立つ。
久しぶりに会うからちょっとでも格好よくAの目にうつってほしいと身なりを確かめる。

よし、大丈夫そうだな。
とは言ってもいつもと同じで学生みたいだねって高校生に言われるんだけどね。

今日の往診は3件で定期的に診て回ってる人たちだから時間もかからず予定より早く終わった。

Aの家に向かう途中なぜか少し自転車を早く漕いでしまう自分がいる。

着いた。ドアをノックしても返事がない。

庭に回ると縁側に蚊取り線香が見えて家の中では扇風機が首を振っていた。