愛は故郷にありました。 (ページ34)

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主治医に頼みページ34

和サイド

やっぱりだめか...

まああれだけはっきりと受け答えできていれば大丈夫だとは思うけど。

診察室に戻りパソコンを見ると早速潤くんからメールが届いていた。

ファイルを開けてAのカルテを見る。
初受診は5年前か。30歳になる前から症状が出てたんだね。

手術に至るまでピルの服用、ホルモン療法、ペインコントロール、偽閉経、あれこれやっている。
潤くんもどうにかオペを回避するためにアイデア考えたんだろうね。

読み終わると手術して正解だったんだなと確信できた。
決意した本人は大変だっただろうけど。

ふと潤くんが夏休みを取ってうちの島に来ようかなと言ったのを思い出した。

受話器を手に取る。

「石黒島診療所の二宮ですが何度も失礼します。松本先生はお手すきでしょうか？」

保留音が流れる。
忙しいかな。東京の大学病院の医者が暇なわけないか。

そう思いながら診察室をぐるっと見渡す。
いたってシンプルな診察室。まあ役割が違うとは言え最先端の設備の整った大学病院で難しい症例を毎日診ている同期の潤くん。
すごいなぁと改めて思う。

でも俺は今のこの生活が幸せ。
島民のみんなが笑顔で健康でいてくれるのが俺の幸せ。

『お待たせ。どうかした？』

「忙しいのに何度もごめんね。ねぇ明日からうちに来れない？」

『は？』

そりゃ驚くよね。

「Aが熱発してるの38度超え。膣の状態だけ術後一度も見れてなくてさ。」

『なんで？痛みがひどい？』

「いやそうじゃなくて。ほら顔見知りというか幼馴染だからなのかな。どうしてもそれだけは嫌だって。」

『だから俺に島に来いって？』

「主治医でしょ？術後の経過も一度も見てないわけだし。」

『見てないっていうか岩田さんが来ないんだもん見ようがないよ。』

「可能性は低いけどもし膣の縫合しているところで感染起こしてたりしたら厄介だからお願いします。」

『わかったよ、て簡単に俺が決定して言えることじゃないから明日まで時間ちょうだい。まぁ術後の患者さんのフォローアップでと言えばなんとかなるかも。とりあえず抗生剤だけ始めてくれる？』

「了解。じゃ明日連絡待ってるね。忙しいところありがとう。あ、カルテもサンキュー。目を通したよ。大変な数年間過ごしてたみたいだねAも潤くんも。」

『まあ手術が一番適した治療法だったんだと思うよ。』

「そうだね。じゃまた。」

電話を切ってAの様子を見に行くと寝息を立てて眠っていた。