愛は故郷にありました。 (ページ31)

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主治医との電話２ページ31

和サイド

なぜ子宮全摘だったのか、それが俺の知りたいこと。

『本人からは何か聞いていますか？』

「J大学病院で手術を受けたことだけです。」

『そうですか。３年ほど前から子宮筋腫に悩まされていて。大きさは５センチとそれほど大きくなかったのですが位置が悪く膀胱と直腸の間にあって、周辺臓器への圧迫による痛みがコントロールが難しいくらいになってきまして。ホルモン療法も試したんですがなかなかうまくいかず、日常生活にまで影響が出るようになったので年齢のこと未婚のこと重々承知してたんですが、全摘も一つの選択肢としてありますよ、と私から伝えました。』

「なるほど。」

そんなことがあったんだ。
きっと苦しい数年を過ごしたに違いない。日常生活へ影響が出るほどの痛みと戦っていたのか。

『体の回復の状態はわかりましたが、精神的なほうはどうでしょうか？支えてくれる人は近くにいるんですか？』

「岩田さんのご両親は１５年前に亡くなっていて家族はいません。島民はみんな家族みたいなものだから支えてくれる人はたくさんいますが彼女がどうしたいか、という具体的なことはまだ何も話せてません。とりあえず体力の回復を優先させているので。」

話ながらなんとなく知っている人のような気がしてきた。
婦人科の松本先生？うーん、なんか記憶の片隅に引っかかるものがある。

『そうなんですね。外来もいつも一人だったし入院手術の時も一人だったので大丈夫かなと心配してたんですけど。』

「とりあえず故郷に戻ってきたのでしばらくは心も体もここでゆっくりするんじゃないかなと思ってるんですが。」

『石黒島って香川県の？』

「そうです。よくご存じですね。」

こんなマイナーな島、東京の人が知ってるのか。

『香川出身なんです私。』

え？もしかして？

「もしかして県立大学医学部56期生？」

『え？』

思い出した。際立つイケメンだった松本だ。

「松本潤先生ですか？」

松本が婦人科専攻すると聞いた時はこんなイケメンだと大変だろうなと思った記憶がある。

『もしかしてにの？え？そういえば故郷に戻って離島医療に捧げるって。』

「正解。お互い道それずに頑張ってるわけだ。にしても奇遇すぎるよ、Aの執刀医が潤くんだなんて。」

『Aって、すごく親しいんじゃん、彼女？』

「幼馴染だよ。島民はみんな家族みたいなもんて言ったろ？」

それにしてもこんな偶然あるんだな。
しばらくは懐かしい話でもりあがった。