愛は故郷にありました。 (ページ30)

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主治医との電話１ページ30

和サイド

ダメ元で受話器を手に取り代表番号にかけてみる。

受付時間の案内テープが流れた、やっぱりな、と思って切ろうかと思ったときに
緊急の場合は、と電話番号が流れたので慌ててメモを取る。

緊急の案件として扱っても良いだろう。
担当医もきっと気になっているに違いない。

一度受話器を置き再度手に取る。

1コールですぐにつながった。

「遅くに失礼します。石黒島診療所の医師の二宮と申しますが、そちらの婦人科で２週間ほど前に手術を受けた岩田Aさんについて至急執刀医と話をしたいんですが。」

こんな言い方でつないでもらえるか不安だったけれど
少々お待ちくださいと保留音が流れた。

『婦人科病棟です。』

どうやらこの時間は病棟につながるらしい。

「石黒島診療所の医師の二宮といいますが岩田Aさんについて、」

そこまで言いかけた時に

『すぐに先生と代わりますね。』

どうやら緊急の案件として扱われているようだ。
もしかしたら外部のドクターから連絡あればすぐに繋ぐよう手配されていたのかもしれない。

『婦人科腫瘍専門の松本です。私が執刀しました。岩田Aさんについてということですが。』

「はい。初めまして。石黒島診療所の二宮と申します。岩田さんのカルテをできれば送ってほしいのですが。」

『彼女の容態は？』

「先生がきれいに縫合してくださってたんですけど、不全を起こして７割くらいやり直しました。不幸中の幸いで感染もなく合併症もなく現在は順調に回復しています。術後５日目で食事もとれてますし、歩行訓練も問題ないです。」

『あー良かった。』

本当に安堵した声が聞こえてきた。

『母親の容態が悪いからどうしても術後３日で退院させてほしいと言われて必ずフォローアップにくるように念押ししたんですが結局現れず。その後電話で一度話しただけで状態がわからず本当にもう心配で夜も眠れませんでしたよ。』

確かに自分が執刀した患者がその後どうしてるかわからないのは不安で仕方ないだろう。
それにしてもなぜ母親の容態が悪いなんて嘘をついたのだろうか。

「それでですね、お聞きしたいのは岩田さんはまだ３４歳で未婚です。子宮全摘は避けられなかったんでしょうか。」

大学病院の医師が判断したことだから間違いではないと思うけど
他の選択肢がなかったのか気になる。