愛は故郷にありました。 (ページ20)

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処置2 ページ20

和サイド

「痛くないかA。傷の状態診るからちょっと触るよ。」

身体がびくんと動いた。そりゃ痛いよね。
術後のふさがってない傷口触られてるんだもんね。

ゆ「血圧100の75、体温37度9分、呼吸数20です。ルートも取りました。補液つなぎますか？」

「うん、お願い。キシロカインくれる？」

てきぱきと無駄な動きのない清水さんはすぐ隣に来てキシロカインを手渡してくれた。

「A、痛いと思うから麻酔するね。針刺ささるときだけ痛いけど頑張って。」

帝王切開と同じ傷なんだけど。でも赤ちゃんはもちろんいないしホルモンの影響が出るような感じもしない。となると、子宮か卵巣、生殖器関連の手術だろうけど。本人から聞きたいけどなぁ。

「はーい、あと一か所で麻酔終わるからね。ねぇA、どこの病院で手術受けたの？」

なんとなーく誘導尋問的に聞き出せないかな。

A「東京の病院だよ。」

そりゃそうだろうよ。

「大きな病院？先生の名前覚えてる？」

担当医がわかれば通院歴から病歴、それに手術のことも聞けるしカルテ送ってもらおうこともできる。

A「大きな病院だったよ。先生の名前は言いたくない。和くんその先生に話聞こうと思ってるんでしょ？」

酸素投与と麻酔が効いて痛みを感じなくなったからかさっきより楽そう。

「これ触っても痛くないね？」

確認してから傷口に触れる。

「もちろんAのプライバシー尊重したいけど医者として何の手術をしたのか、どういう状態だったのかは知りたい、というか今後の経過観察も考えると知ってたほうが良いと思う。」

A「いつか言うから。」

目を閉じてしまった。これ以上はやめておいたほうが良いと思い手元に集中する。

「せっかくきれいに縫合してるけど一度開こうか。中見たいし洗浄もしたいし。はさみちょうだい。」

パチンと良い音を立てて手渡してくれる。

「あと生食も。」

縫合をほどくと傷口は案の定ほとんど閉じてなくて開いてしまった。
化膿してなくて良かったよ、本当に。敗血症にでもなったらここじゃ処置しきれなかったかも。

時々Aの顔を見るけど目は閉じられたままだ。

傷口を開創器で開き内臓を確認する。

あ...一瞬自分で顔が引きつったのがわかった。
隣にいる清水さんのほうがプロだ。
表情を変えず手元に集中している。

ゆ「洗浄しますか？」

シリンジに生食をいれて手渡してくれる。
集中してください、とその目が伝えてきた。