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それは正に、らしくねぇ要望だった。
いつも鬱陶しいくらいに俺の世話を焼き、真面目で、だが時にはおふざけも興じる。耐え難い筈の絶望を味わいそれを乗り越え今日まで生きてきた屈強な精神を持った少女が今、普段は見せない弱さを見せた。
いや、屈強だなどというのは周囲の評価に過ぎない。屈強に見えているだけで、コイツには、Aにはちゃんと弱さがある。俺はそれを、少し前にこの目で見、肌で感じ取った。
「そんなことでいいのか？」
「そんなことでいいのです。」
苦しげに息を乱すAは懇願するかのごとく、俺の問いにすかさず答えた。それがAの望みであるのなら、言い出した手前、俺はそれを叶える義務がある。Aの頭に手を乗せ、ゆっくりと頭を撫でる。何度も、何度も。こういう時、何と声を掛ければいいのかわからず言葉を発せずにいたが、案外それは正解なのかもしれない。
「ふふふ。」
「なに笑ってやがる。」
こんな時に笑うのは可笑しいだろうが。
「こんな私の我儘に付き合ってくださるなんて、師範は本当にお優しいのですね。」
Aはクスクスと悪戯っ子のように笑う。いつもなら馬鹿にしてんのかと蹴散らすところだが、今日日それをするわけにもいかず、感情のやり場がない。
「くだらねえこと言ってねェで早く寝ろや。」
ぐしゃぐしゃと少し荒く頭を撫でてやると、今度は「ふふっ。」と嬉しそうにAは笑った。何がそんなに嬉しく可笑しいのか気になりつつも、ここで反応してはこれの繰り返しだ。
Aは俺から反応がなかった事と、そして頭を撫でられ続けることに安堵したのか、ようやく眠りに落ち、スウスウと寝息を立てた。
人を寝かしつけるってのはこんなにも骨の折れる事だったかァ？そもそも人を寝かしつける事自体が何年ぶりのことか。懐かしい記憶が頭を巡った。
こりゃ一晩で回復は無理そうだな。汗ばんだ体で荒い呼吸を繰り返すAを見て思う。俺は明晩、任務があるためAの看病をすることが出来ない。だから一刻も早くAの回復を祈ってはいるが…
「呪いだよ。」
昼間の時透との会話がふと思い出される。
「接吻は病払いの呪い。だからAに教えたんだよ。どこで聞いたか忘れちゃったけどね。」
それをすれば病が治るなど信じ難い。ただ俺にはAがしてくれたような医学を用いた療法は何一つ出来ない。
だから、せめて…
ちゅ、
と、静かな部屋に音が響いた。
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瑠璃瑚(プロフ) - 釈迦様さん» お恥ずかしい変換ミスです…作中一通り見直して訂正はしたのですが、まだ直っていない箇所が有ればご指摘頂きたいです。 (2020年2月19日 20時) (
レス) id: f99ae6b9f6 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃瑚(プロフ) - しらとぅさん» なんとお優しい、、ありがとうございます！>< (2020年2月19日 20時) (レス) id: f99ae6b9f6 (このIDを非表示/違反報告)
釈迦様 - 師範が市販…°。:(°ε°)ﾌﾞﾌｯ! (2020年2月17日 0時) (レス) id: bccea59c19 (このIDを非表示/違反報告)
しらとぅ(プロフ) - 瑠璃瑚さん» いえいえ！誰でもミスはありますよ！これからも頑張ってください！ (2020年2月8日 20時) (レス) id: 785ac6cfee (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃瑚(プロフ) - しらとぅさん» ご指摘ありがとうございます！お恥ずかしい変換ミスをしてしまいました、、>< (2020年2月8日 20時) (レス) id: f99ae6b9f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瑠璃瑚 | 作成日時：2020年1月11日 14時
