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繋いだ右手に熱が集中する。自分の熱と、Aから伝わる熱が合わさって更に右手が熱くなる。
何でこんなことになってんだァ。しかも、Aは何も言葉を発さない。なのに、俺の手と繋がっている手には少しずつ力が込められて、俺の手を強く握っている。まるでそこに何かの意味が込められているかのように。
「やっぱり…」
Aがようやく口を開いた。
チラッとAの顔を見て、俺はギョッと目を見開いた。
「おい、どうした…ッ!」
なんで、そんな今にも泣き出しそうな顔をしてやがる。
普段のAらしからぬ表情を見て、焦りと困惑と苦しさで胸がグンと締め付けられる。
「柱の皆様の手は、とても硬い。」
ポツリとAが呟いた。
「水柱様と一日手を繋いで気付いたんです。あの方の手は、掌は厚く硬くて、指も指先も何度も豆が潰れて硬くなっていた。沢山の命を救ってきた努力の証。それは師範も一緒で、きっと他の柱の方も同じです。」
ギュッと、俺と繋がる手に力が入る。
「私には努力が足りない。」
そんなことは無いと、軽率には言えなかった。
冨岡から聞いた話。Aと冨岡が参加した今回の任務では隊員数名が戦死したらしい。任務で隊員が命を落とすことは珍しいことでは無いし、皆その覚悟を持って任務に参加している。ただ、Aにとってはそれは当たり前では無い。なにせよAは過去の任務において、Aと同行した隊員を戦死させたことは一度も無いからだ。
犬飼は自分が妙な血鬼術を食らって柱の俺の手を煩わせたことで、他の隊員が死ぬ羽目になったと酷く嘆いていた。
冨岡はそう言っていた。
こんな時、嘆いている弟子を相手に、歳下の女を相手に、どういう言葉をかけてやれば良いのか。小さくて柔らかいその手を包んで、何と声を掛ければ良いのか。
「お姉ちゃん!」
「わっ?!」
突然、前から走ってきた餓鬼がAに抱きついた。
「あれ、君は…」
「この前お姉ちゃんに鬼から助けて貰ったの!」
どうやらその餓鬼はAと顔見知りらしい。
「こら!鬼の話は内緒だって言ったでしょ。」
「えへへ!」
「えへへじゃないの。前にあげた御守りは?ちゃんと持ってる?」
鬼から救った餓鬼を相手にするAはいつものAのようで、少し安心する。餓鬼が御守りを持っているのを確認するとAは近くにいた親に餓鬼を引き渡した。
ちゃんと守れてるじゃねェか。
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瑠璃瑚(プロフ) - 釈迦様さん» お恥ずかしい変換ミスです…作中一通り見直して訂正はしたのですが、まだ直っていない箇所が有ればご指摘頂きたいです。 (2020年2月19日 20時) (レス) id: f99ae6b9f6 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃瑚(プロフ) - しらとぅさん» なんとお優しい、、ありがとうございます!>< (2020年2月19日 20時) (レス) id: f99ae6b9f6 (このIDを非表示/違反報告)
釈迦様 - 師範が市販…°。:(°ε°)ブフッ! (2020年2月17日 0時) (レス) id: bccea59c19 (このIDを非表示/違反報告)
しらとぅ(プロフ) - 瑠璃瑚さん» いえいえ!誰でもミスはありますよ!これからも頑張ってください! (2020年2月8日 20時) (レス) id: 785ac6cfee (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃瑚(プロフ) - しらとぅさん» ご指摘ありがとうございます!お恥ずかしい変換ミスをしてしまいました、、>< (2020年2月8日 20時) (レス) id: f99ae6b9f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠璃瑚 | 作成日時:2020年1月11日 14時