第197話「夢野久作という少年」夢主 ページ6
何時だってそうだ。
太宰さんも中也さんも、過保護なのだ。
私の腕の中で眠る、頬に涙の後のある少年の時もそうだった。
少しでも命の危険があるなら、別の命令をして私を遠ざけようとする。
お二人は、私を危険から遠ざける時だけは喧嘩などしない。
詰まり、お二人にとって……私はそれ程までに「大切な存在」なのだ。
そんな事を考えつつ、太宰さんからの命令通り、私は「悪夢」から出来るだけ離れるために……走っていた。
と、その時、Qが私の腕の中で、もぞもぞと動き出す。
「う……。」
「……お早う、Q。」
私は、微笑んで見せる。
すると、私の顔を見たQは驚いた様に目を見開いた。
それから、小さな小さな疑問を、もっと小さな声で口にする。
「……如何、して。」
その一言には色んな「如何して」が詰まっているのが判った。
如何して、扶けたのか。
如何して、微笑んだのか。
確かに、この少年には分からないことだらけだろう。
「私は女王を身に宿す器……女王だから、君も救うの。」
「でも、だからって……!ぼくは、おねぇさんの大切な人を壊そうとしたんだよ……!」
「……じゃあ、君の納得のいく答えを用意してあげる。」
本当の理由を拒んだ少年に、私は少し口を尖らせた。
「太宰さんが、君を扶けると仰ったから。探偵社の存続の為に……ね。……それなら納得出来る?」
「……矢っ張り、おねぇさんは__」
「でも、太宰さんが扶けなくっても私は君を扶けた。……何故なら、君は少し寂しがりやなだけな幼子だから。……私は女王だから、見捨てるなんて出来ないの。君なら判るでしょう?其れが、この異能を持ったものの運命だから。」
「……運、命?」
私はQを降ろして、小さく頷く。
「君が、忌み嫌われた様に、私は多くに愛され、全てを愛す運命なの。だから、私は君も愛す。愛する者は救いたいって思うでしょ?……其れが、君を救う理由。君がしたことは許されないだろうと思う。私も何も思わない訳じゃないけど……でも、君はそれを望んだ訳じゃない。……でしょう?」
私はQにそう云うと、微笑んで見せたのだった。
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作者名:業猫 | 作成日時:2020年1月6日 15時