第152話「太宰さんへのお願い」夢主 ページ10
「……太宰さん、お願いが有るのですが。」
「なんだい、いろは。いろはからのお願いなんて珍しい……__」
「私が戦線から離脱することを許して頂きたいのです。」
「…何だって?」
私の真剣な言葉に、表情に……太宰さんは顔を歪めた。
私は続けて頭を下げた。
そんな私を見た太宰さんは、溜息を吐くと少し考えるような仕草をすると、私の肩に手を乗せる。
「……良いだろう、判った。なら……大丈夫だとは思うが、念の為姐さんの監視に回ってくれ。……出来るね、いろは?」
「勿論です。」
「なら……今すぐ行くと善い。二人は私と敦君で護衛しよう。」
任せ給え、と笑う太宰さんは、何時になく優しい顔で、私は気を遣わせてしまった事に気が付くのと同時に、周りに居る色々な人から愛されていることに気が付いた。
ナオミちゃんの言葉で、心の痞えが取れた事により、世界が澄んで見える様になったのに気が付く。
……嗚呼、私は今までどれだけのものを、ことを歪んで見ていたのだろう。
「……有難う御座います、太宰さん。」
私は顔を上げると、笑ってそう云う。
太宰さんの背後にいるナオミちゃんが、少し嬉しそうな顔をしていた。
三人から少し離れた所で一人寂し気に立ち尽くす敦くんは、ついさっきまでの私の様に呪いに囚われている様に見える。
私は声を掛けようとして、止める。
私は、彼を救う言葉を持ち合わせていないのが判ったから。
人を救うのは、何気ない言葉だと知っているから。
……それが、今の私には出来ないと感じてしまったから。
兎も角……こうして、私は単独行動することになったのだった。
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年9月9日 16時