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第187話「眠り姫・弐」夢主 ページ45

「……助けを待つ、眠り姫様。」

ぼそりとそう呟いた私のすぐ隣を、太宰さんは歩いていく。

「眠り姫様、ねぇ…。」

私の直ぐ隣まで来ると歩みを止めた中也さんは、何処か遠くを見詰めるような目で、私の発した言葉を口の中で転がせる。

「木の根を切り落とさないと。中也、短刀(ナイフ)貸して。」
「あ?あぁ…ん?確か此処に…。」
「無くされたのですか、中也さん?仕方がないですね……此れが終わったら何時もの職人さんに依頼を…__」

私が頭の中のやることリストに中也さんの短刀の発注を書き加えようとしたその時、太宰さんの能天気な声が聞こえてくる。

「__あ、さっき念の為摺っておいたんだった」
「手前……」
「太宰さん……。」

太宰さんの言葉に怒りを露わにする中也さんと呆れ顔になる私。
太宰さんは、短刀をしっかりと握ると…

「さて、やるか。」

……少年の首元に、短刀を当てた。

「だっ……!?何を……!」
「……止めないの、中也?」

慌てて止めようとする私の隣で、中也さんは静かに太宰さんを見詰めていた。
そんな中也さんに、太宰さんは少し不思議そうに問いかけるのだった。

中也さんは、何故か私の方を少し見て頭を撫でると口を開く。

「……首領(ボス)には、生きて連れ帰れと命令されてる。だが、この距離じゃ手前のほうが早ぇ。……それに、その餓鬼見てると呪いで死んだ部下達の死体袋が目の前をちらつきやがる。やれよ。」

中也さんのその声は、とても冷たかった。
本当に沢山の人達を殺したのだろう。
確かに、一時私が遠ざけられていた頃がある。
…あの時、沢山の同僚たちが次々と死んだらしいことも知っている。
けれど。
あの日、あの駅で、私はこの少年はとても悲しい、愛されたいだけの少年なのだと知ってしまった。気が付いてしまった。
愛され続けてきた私と少年は、相性が悪い。

……けれど、私は女王だ。
守らなければ……救わなければならない。
少年も、私にとってはその対象だった。

「太宰さん。その少年を……夢野久作を、殺さないで。」
「……。」

そう云った私を、太宰さんは驚いたように見詰めていた。

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設定タグ:文スト , 中島敦 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年9月9日 16時

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