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第181話「遊戯と現実。」夢主 ページ39

「……ねぇ、いろは。いろはは本当に賛成なのかい?」

気配を消していたにも関わらず、太宰さんは何時もの様に私を見つけるとそう云う。
直に……私の予想では数分と経たぬ内に森さん率いるマフィアが現れる筈である。
故に、最大限の警戒をしていなければならぬのだが……__仕方がない。

私は小さく溜息を吐いた。

其れから何時もの微笑みを顔に張り付けて太宰さんのすぐ前まで歩み寄る。
太宰さんは、とても真剣に悩んでいらっしゃる様子であった。

「……マフィアと協力関係を築くことについて、ですか?ならば前にも云いましたが賛成です。……最も、苦肉の策では有りますが。」

敦くんの云う通り、確かにマフィアは総力を使ってヨコハマを護ろうとするだろう。

探偵社と違い、マフィアは「ヨコハマの闇を牛耳る組織」だからだ。
彼等は、ヨコハマに本拠点が有るから此れほどの力を所持している。
故に、彼等にヨコハマを見捨てるという選択肢は無い。在っても選べない。

此れが遊戯(ゲヰム)だったならば、迷わず協力関係になっただろう。

……けれど、此れは現実(リアル)だ。
そんなに単純じゃあない。
リスクも高い。

「……けれど、マフィアと協力関係に至らなければ……__一瞬の間でも善い。敵対だけは避けなければ、探偵社は必ず潰える。私でも判る事が、太宰さんが判らぬ訳が有りません。……何を、迷っているのですか、太宰さん。太宰さんは……目的の為なら手段を択ばないお方の筈です。」

__何を、恐れていらっしゃるのですか?

私はそう云ったが、太宰さんは依然表情を曇らせているままであった。

「……私は」
「……織田作さんに云われた言葉を忘れたのですか。人を、救わねばなりません。その為になら、マフィアであろうと使いこなして下さい。……其れが、太宰さんの才能でしょう。」

ずっと背中を追いかけてきたから、よく知っている。

太宰さんの本当に得意な事は、人を救うことでも、勿論殺しでも無い。
多くの人を魅せて、思うがままに操ること。

堂々と、他の人には出来ないことを容易くこなす太宰さんの背中は、とても輝いて見えたのだ。

「……太宰さん。「状況を見て判断しろ。私情は持ち込むな」。そう教えて下さったのは、太宰さんでしょう。」

私は真っ直ぐと太宰さんを見詰め、確りと言葉一つ一つに想いを込めて発した。

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設定タグ:文スト , 中島敦 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年9月9日 16時

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