【文豪ストレイドッグス】もういちど。肆【中島敦】 (ページ4)

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第146話「白黒の厄災(前編)」夢主ページ4

「それ、は……＿＿＿＿＿」

私が、やっと声が出せた、その時だった。

『間もなく、列車が到着いたします。』

駅の構内に、声が響いた。
私は驚いた半面、とてもホッとする。
……ただ、答えを先延ばしにしただけなのは分かっていても。

タタン、タタン……という音と共に駅に入って来た列車は、フシュー……という音を立てるとゆっくりと止まった。

「春野さん、ナオミさん！ご無事でしたか！」

列車から出てきた二人を見ると、敦くんは安心したようにそう云いながら駆け寄った。
ナオミちゃんは、私達に気が付くと、少し手を振ってくれる。

「えぇ……。でも、まさか事務員が狙われるなんて……。」
「……安心してください。僕達が避難地点まで、護衛しますから！」

とん、と軽く胸を叩いてそう云った敦くんを、私は微笑みながら見、それから私も頷く。

「私も、全力を尽くすよ。ナオミちゃんに何かあれば、仮にも相棒である谷崎さんに顔向けが出来ないからね。」

そう云うと、私は女王を呼び出そうとして、二人の背後にいる少年に気が付く。

「……その子は？」
「嗚呼……紹介しますわ。列車の中で知り合ったのですけど……」

敦くんが、よく見ようと少し体を傾けたその時、少年はよろけたように敦くんに体当たりし、そのままよろよろと数歩歩くと、にやりと嗤った。

その笑みは、とても悍ましく、思わずゾッとする。

……にしても、あの子……何か、見覚えが＿＿＿

その時、少年は愉しそうに歌いだした。