第166話「生きる価値」夢主 ページ24
「……
鏡花ちゃんは、顔を埋めたままそう云った。
「……は?」
私は思わず聞き返す。
……モビー・ディック?
聞いたことも無い。
「……組合の、拠点。其処に、あの人は居る。私が見た。……間違い、無い。」
組合の拠点。成程、機密度が高くまだ調べ切れていない部分である。
最優先で情報を集めるとしよう。
「……用は済んだでしょう、いろは姉さま。……私はもう、光を見る気は無い。このまま死ぬなら……それで善い。あの人は、いろは姉さまが救ってくれるんでしょう?」
そう云った鏡花ちゃんに、私は黙って異能を発動させた。
其れから、王女は鏡花ちゃんの頬を殴る。
鏡花ちゃんは呻き声一つ出さない。
まるで人形のようであった。
……まるで、あの日の私のようだった。
「……たかが35人でその廃れよう。成程、芥川さんが貴方を捨て駒にしたのも頷ける。貴方に生きる価値など無い。その、本当の意味を精々考えておきなさい。……また私は貴方の前に来なければならなくなるでしょう。」
私は異能を解くと、軽蔑した表情で鏡花ちゃんにそう云う。
35人くらい、今まで私が殺めた数に比べればごく僅かだ。足元にも及ばない。
太宰さんと比べようものなら、それ以下だ。
……だと云うのに、此処まで壊れているのなら、光の世界は勿論だが、マフィアにだって向いていない。
生きる価値も場所も無い。
価値も居場所も作るものだ。
もし、鏡花ちゃんが其れに気付けたなら……私は、鏡花ちゃんがどれだけ抵抗しようとも光の世界に連れ出す。
「……じゃあね、鏡花ちゃん。その時まで。」
私は微笑んだ。
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年9月9日 16時