【文豪ストレイドッグス】もういちど。参【中島敦】 (ページ42)

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第134話「訪問者」ソルページ42

しりとり事件(・・・・・・)の直後の出来事であった(最も、あれを事件と云うならば、だが)。

「むぁああ～～。暇だ～、外出たいぃ～！」
「今出たらマフィアか組合(ギルド)に頸を捥ぎ取られちまうよ。」

我慢が出来なくなったらしい乱歩さんは、机に突っ伏してそう云う。
そんな乱歩さんに、与謝野先生は新聞に目線を落としたままツッコんだ。

「監視映像に異常は無いか。」
「今の処は退屈な映像ばかりだねェ」

監視映像が映るパソコンを見ながらそう答える与謝野先生に、社長は静かに本を読み乍ら再び口を開く。

「この講堂は通常入口が存在せず、侵入には地下の廃路線を通る他無い。故に、敵兵が侵略して来た時、路線内の監視映像によって事前にそれと知れる。」
「道中は罠も満載だしねェ。この地形で侵略戦なんて、余程の軍隊でもなきゃ二の足を踏むさ。」
「戦争なんて退屈だよ！駄菓子の備蓄は半日で尽きたし……。……ソル、何か面白い異能の持ち主になれない？」
「面白い、ですか？……すみません、今まで戦闘向きな人物ばかり記憶してきたので……。蓄えて置きましょう。まぁ、最も……戦争(これ)が終われば、ですが。」
「むぅ……ソル、準備が悪いなぁ！」
「……ソルは悪くないよ、乱歩さん。」

苦笑いする僕に、乱歩さんは頬を膨らませ、与謝野先生は再び新聞に目を落としていた。
平和であった。
……少なくとも、次の瞬間までは。

「……如何したンだい？」
「社長。攻勢(オフェンス)を呼び戻した方が良いよ。ソルだけじゃ持たない(・・・・・・・・・・)。」
「敵か？襲撃規模は何人だ？」

それ(・・)を目にした社長は、目を大きく見開く。

「……一人だ。」

映像には＿＿＿

「……！“重力遣い”…中原、中也……！」

僕は、自然と強く拳を握っていた。
頬からは、汗が流れていく＿＿＿＿＿。