第74話「悪夢」夢主 ページ27
白い空間に、“私”は一人立っていた。
『……お兄ちゃん、何処にいるの?』
“私”は不安げに、大好きな背中を探している。
『……お兄ちゃん!』
『いろは……。』
振り向いたその人物は、優しく微笑んでくれている。
……と、その時周りにかかっていた靄のような、霧のような何かがぶわっと晴れた。
『……!』
“私”がお兄ちゃんに駆け寄ろうとした、その時、大型のトラックがお兄ちゃんの体に突撃した。
衝撃に耐えかねた体は、目の前で一瞬のうちにぐちゃぐちゃになり、真っ赤な血が雨の様に私を汚していく。
『お兄……ちゃ……ん……?』
“私”は小さく震えながら、お兄ちゃん“だったもの”に近づく。
その肉塊は、ぐちゃぐちゃで吐き気さえ覚える。
やめて、私は悪くない。
悪くない……!
私は、頭を抱えて座り込んでしまう。
もう……立ち上がれない。
その時、目が覚め、ガバッと起き上がった。。
「はぁ……、はぁ……。……ッ、私、は……!」
私はふと顔を上げ、鏡を見る。
……と、そこには真っ青な顔で汗をびっしょり掻いた私が不安げにこちらを見つめていた。
「太宰さん……。」
私がベッドの上で膝を抱えて小さく呟いた、その時……__
「呼んだ?」
「……、太宰、さん……?」
上から声がして、思わずその方向を見ると……通気口から子供の様に無邪気な顔をした太宰さんが顔を覗かせていた。
「……降りてきたらどうですか?」
「それもそうだね!!」
私が少し呆れたように云うと、太宰さんはニコニコとご機嫌に私の目の前に降りてくる。
「……首輪、自力で外したのかい?頑張ったね、いろは。君は善い子だ。……約束通り、助けに来たよ。」
「太宰さん……。……はい。待ってました。」
私を抱きしめながら頭を優しく撫でて下さる太宰さんに、私は不安や恐怖なんかの感情が溶けていくのを感じていた。
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年6月13日 11時