第68話「憎悪」夢主 ページ21
余談だが、私は人より憎悪とか嫌悪感とか……そういった感情に、人一倍敏感である、という自負がある。
それには、太宰さんの元、マフィアでバリバリ活躍していた頃、任務で憎悪なんかの感情は難易度が上がる要素だった為に敏感になっていった、という裏話が有るのだが。
さて、そんなことを考えていたのは……
「何故だ。“何故貴様なのだ”。」
「……!?」
目下の芥川さんの憎しみが、とてつもなかったからである。
そんな事を思っていると……芥川さんは、羅生門で敦くんを殴っていた。
「貴様の異能は所詮、身に着けて幾許も無い付け焼き刃。欠缺ばかりで戦術の見通しも甘い。……だのに、何故貴様なのだ!」
憎悪を隠すことなく敦くんに向ける芥川さんを、私は静かに見つめている。
「……助けに入らないのかい?」
「死ななければ死なないからね。与謝野姉さまは偉大だよ。これは……よっぽどじゃなければ、入らない方が良いの。この感情は……私もよく知ってる。」
森さんの姿から元に戻るソルの疑問に、私は感情を持つことなく、ただ、見つめている。
隣に居たエリス嬢(云うまでもなく、本物ではない)は、ソルが異能を解いたことにより……消えていった。
「__云わせぬ。あの人に、あのような言葉……二度と云わせぬ!!」
「……拙い。ソル、下がって!」
羅生門で敦くんを捕らえた芥川さんに、私は成そうとしていることを悟り、咄嗟に異能を展開する。
「羅生門__彼岸桜!」
「正気に戻って、芥川さん!!」
私は時間が足りなかったために、傷つけば命が危うい臓器のみを護った。
故に、ドサ……と落ちた敦くんは、死んだように動かない……だが、呼吸しているのは見て分かるので、私は一安心する。
「……いろは、か。案の定抜け出したのだな。」
「まぁそれ位は予測して貰ってないと困るしね、マフィアの一員として。……さて、落ち着いた?いい、人虎は生け捕りなんでしょ。太宰さんに認められたいなら……任務はいつだって冷静にしなくちゃ。」
「……そうだな。癪に障るが……貴様の__いろはの、云う通りだ。」
冷静になってきた芥川さんと話す私は船から逃げ出そうとする。
……すると、敦くんは消えそうな声で引き留めた。
「待……て……。」
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年6月13日 11時