第66話「引き抜き」夢主 ページ19
私とソルは部屋に戻ってくる。
と、私は昨日と同じ様に小説を手に取り、読み始める。
ソルはというと……任務の為に、私の好みのぬいぐるみになり、棚の上から部屋全体を見ていた。
「……ソル。」
「……なんだい、いろは。」
「盗聴器、全部外して。物凄く不愉快なの。」
「でも……__」
「お願い。これは命令。」
「……分かったよ」
仕方ないな、とでも云う様に棚から降りてきて、部屋のあらゆる場所に仕掛けられていた盗聴器を一つ一つ、破壊していくソルを、私は小説を置いて眺める。
「さて……。ここまでして、一体何を話したいんだい?」
「……とっても魅力的なお誘いの話。ソル。探偵社に来るつもりはない?」
「何故?僕はともかく……君はここに居た方が安全なのに。」
「安全?私の弱点は、一つだけ。それは“異能無効化”。太宰さんとソルが、完璧に味方なら……私は負ける筈が無い。用意された安全何て……要らない。其れに、安全が幸せとは限らない。」
「……抜けるのは、確定しているんだね?」
「太宰さんが良いというのなら。」
「……分かったよ、ついて行こう。いろはは僕の姉のような存在だからね。あの日、僕を見つけてくれたのはいろはだ。……その恩を、返すとしよう。」
「有難う……ソル。」
私は、嬉しくて笑みを溢す。
すると……そんな私を見たソルは、苦笑いした。
「全く……我儘で目が離せないお姉さんですね。」
「私は強欲だからね。自由と幸福にも強欲なだけだよ。」
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年6月13日 11時