第65話「私と中也さん」夢主 ページ18
「中也さん、本当に良いんですか?」
「良いって云ってるだろ。何が良い?いろは、ソル。」
「え、えっと……あ、僕、クリームコロッケが食べたいです!」
「分かった、じゃあ一寸待ってな。」
そう云い、台所に消えていく中也さん。
因みにここは中也さんの家で、中也さんかソルから離れないという条件で、一時的に首輪を無効化している。
「……そういや、何でソルはまだマフィアに居るの?私と違って……残って欲しいって云われてる訳じゃないんでしょ?」
「嗚呼……。別に、理由はないよ。行く当てがないからそのまま流されてるだけさ。」
「ふぅん……。」
私はその答えに、探偵社へ引き入れることを心に決める。
そもそも、彼は私が発掘したようなものだし、何より彼の異能は利便性が高い。
敵対すれば、今回そうだったように……厄介な相手なのだ。
ならば、仲間に引き入れるに限る。
「ほら、出来たぞ。食え。」
「は、早くないですか!?」
「昨日シチューにした残りのベシャメルソースが有ったから、実際ほぼ揚げるだけだったからな。」
どん!と、机に置いたお皿の上には、サラダとクリームコロッケが綺麗に盛り付けられていた。
「ソルは“俺の命令で”暫くいろはの護身に付きっ切りになるし、いろははマフィアに留めなくちゃなんねぇからな……その前に、な。」
「……私の護身って……どういうことですか、中也さん?」
「嗚呼、まだ云ってなかったか。人虎に賞金を懸けてる奴らがお前にも賞金を懸けてるらしくてな。理由は不明だが……マフィアとしても、お前を売ることは考えられねぇ。お前自身が十分戦えることを頭に入れた上で……“便利屋”まで動かす程の価値があるっつーことだ。……この状況で、まさか抜けるとは云わねェよな?いろは。」
ニッコリと笑う中也さんに、私は考えを読まれているような気がしてくる。
「……何のことですか?」
私はとぼけることにして、コロッケを口に運んだ。
「……凄い美味しいです、これ。ねぇ、ソルも食べて!」
「え、嗚呼、うん……。本当だね。今まで食べたこともないくらい美味しいです、中原幹部。」
「……そうか。」
私と中也さんは、仲がいい。
けれどそれは……お互い干渉しないから、居心地がいいだけの、表面上の「仲の良さ」なのだ。
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年6月13日 11時