番外編「太宰さんの誕生パーティー・1」 ページ13
「太宰さん、一緒に出掛けませんか?」
ニコニコと笑う少女……暁いろはは、いつもの如く、恩師たる太宰治の想いにも気づかず、今日も抱き着いている。
「逢引かい?良いね、今日は良く晴れていて所謂『お出かけ日和』だしね。……それで、何処に行くんだい?」
「買出しです。」
「……え?」
「太宰さんが今朝、『これが無いと!』と味噌汁に大量に入れていた、味の素の特売なので。」
「……逢引じゃないの?」
「私、そんな事一言も云ってません。」
「……で、でも、今日は私の__」
「ほら、早く用意して下さい。行きますよ。」
涙目になる太宰に、いろはは淡々と怒りに似た感情を示すのだった。
一方その頃、探偵社では総力を挙げて、飾りつけに勤しんでいた。
「敦君、これって……__」
「えぇと……あ、入り口の方です!」
「……出来た。」
「へぇ、やるじゃないか。結構美味そうだね。」
着物の少女、泉鏡花がキラキラと出来上がったケーキを見つめていると、横から名探偵・江戸川乱歩が楽し気に覗き、褒められた泉の表情が心なしか何時もより嬉しそうに見えた。
……と、その時。
「く、国木田さん危ないっ!」
「え?あ、あぁあ!?」
国木田が抱えていた大量の飾りがバランスを崩し……見事に、クリームがたっぷり塗られたケーキに落ちていく。
国木田の目にはそれがスローモーションのようにゆっくりと映る。
「……国木田、これは……。」
「………。」
同僚たちからの冷たい視線に、国木田は申し訳なさそうに、ただただ小さくなっていたのだった。
番外編「太宰さんの誕生パーティー・2」→←第61話「想い人(太宰治編)」太宰治
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年6月13日 11時