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「Aを愛しいと感じてしまった。
……貴方をただの本への道標以外に思えてしまうのです」
「、わ、わかりませんよ!
僕は恋なんてしたこと、ないですから……。」
だから気持ちにこたえられない。
そういう意味を含めて彼の告白を断った。
__そのはずだと云うのに、なんで。
「なら、僕が初恋になるわけですか。
それはそれは、尚更早く落としてあげたくなりますね」
目の前の彼は悠々と笑っているのだ。
ようやっと見えた、僕の知ってるあの冷たい笑顔で___。
「無理ですよ、何があっても。
僕には、探偵社に恩を仇で返すなんてことできません」
「それでも、やってみせます。
僕は貴方が好きですから」
あぁ、本当に頭の良い人の考えてることは理解できない。
_______
_____
___
「おはようございます………。」
「おはよう。
珍しいね、君が遅刻しかけるなんて」
疲れ切った挨拶が探偵社にいた皆の耳に届く。
珍しくすでにいた太宰にそう言われて”彼”のことなど
云えるはずもなく、寝坊しかけたとうそをつく。
荷物を自席において、今日の仕事を始めようと
パソコンを開いたとき。
「ねぇ」
「?なんですか、乱歩さん」
珍しく翡翠色の瞳が眼鏡越しに覗く。
事件でもあったのだろうか、なんて考えてた時
呆れたような、諦めきったような声で
「諦めなよ。
____もう、そこまで落ちてるんだから。」
「……は、」
僕の静止も聞かず、乱歩さんはうずまきに
甘味を食べに行った。
聞いていた太宰さんにどういうこと?と聞かれたが
今の僕にそんな答えるほど気持ちの整理はついていない。
「嘘ですよね……」
「え、Aちゃん、何でそんなに顔赤いんだい?!」
目を背けていたのに、突き付けられたら
自覚するほか道はない。
溢れるように感じる好きの二言に処理をつけようと
必死な中、どこかでドストエフスキーが笑ったような気がした。
___________
情報を処理している中、そう仕事中。
ふいに心が温かくなった。
そこに手をおいてやっとですか、と声が漏れる。
「どうしたの?耳、赤いよ??」
ゴーゴリにそう言われてはじめて気が付いた。
あぁ、早く明日にならないんですかね……_____。
時の進みが遅い時計に苛立って
親指の爪を噛む。
がりり、と痛々しい音がした。
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作者名:露西亜帽 | 作成日時:2018年6月4日 23時