マネージャーの鑑【北信介】 (ページ9)

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旅行 3 ページ9

あれからさらに1時間車を走らせ、ようやく宿に着いた。

案内された客室には露天風呂も付いていて、雰囲気もとても良かった。

いくつか種類のある浴衣は、好きなものを選んでそのまま温泉街を散策することも出来るらしい。

『信介くんには紺色着てほしい…でも、この色もええなあ…。』

先程から、うーんと浴衣を前にして悩んでいる様子。

信介「自分のは選んだんか？」

『まだ～。うちのはどれでもええよ。』

そんな事は無いと、俺も近くへ行って女物の浴衣を見る。

信介「これが似合うわ。」

『これ、うちに？』

信介「おん、これ着てや。」

手渡したのは臙脂色に白のツツジの浴衣。

彼女は昔から赤系の色がよく似合う。

高校のジャージもそうだった。今はすっかり色褪せてしまったが、部屋着として使うほど俺達には愛着のあるもので、貴方が着ている姿を見る度に愛おしく感じてしまうのだ。

『信介くんはこゆ色が好き？』

信介「まあ、そういう事になるんかな。」

『？』

色自体が好きというよりかは

信介「この色着とる貴方が好きやねん。」

彼女を見てそう答えれば、次第に赤く染まる頬。

『またそういうこと…』

照れ隠しか俺から顔を背けた。

改めて見ると本当に華奢で、今にも抱き竦めたい衝動に駆られる。

昼間っからそんな事する訳にも行かないので、ぐっと堪えて頭をよしと撫でた。

信介「俺のは、この色でええの？」

『ん、紺色かグレーか迷っとった。』

帯は、もう決まっとるんやけど。

そういって見せてきたそれは綺麗な臙脂色をしていた。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

お互い選びあった浴衣に身を包み、宿から少し歩いた所にある温泉街へやってきた。

『うち、温泉街初めて…。』

ほわ～、とか言う効果音がつきそうなほど貴方の周りには花が舞っているように見えた。

信介「えらい人やな。」

『さすが有名所なだけあるわ。』

信介「貴方。」

はぐれないようにと左腕を差し出す。

慣れたように絡ませ、ぐっと引き寄せられた。

『あ、温泉卵やって！ちょお寄ってこ！』

信介「おん。」

胸めっちゃ当たっとるなあ。