謎解き遊戯のサイハテ

【番外編　其の四】本の世界 ページ32

『私は…本が欲しい』



「そうねぇ…本…。その人に合いそうな本、
知ってるの？」


『知らない…』


やっぱり駄目か、そうやってため息をつきそうになったその時、隣でずっと静かにしていた
太宰が嘴を入れた。


「スノゥドームは？」


『え？スノゥドーム？』


Aは目を丸くしておうむ返しに尋ねた。

「うん。本の中にいるみたいじゃないか」


『本の中…あ、ありがとう太宰君！』


いつの間にか、すっかり笑顔になっていた。

「スノゥドームかぁ、いいねぇ。早速行ってみようじゃないか！」


雑貨屋にあるだろうというから、そこまで
行ってみた。

『き、きれいだなぁ…』

彼女が手に取ったスノゥドームの中には、
作り物のお菓子が入っていた。

乱歩君はお菓子がすきなはずだ。


きっと喜んでくれるに違いない。きっと。


「探し物は見つかったかい？」


『はい！それは素敵な探し物が。本当に、
ありがとうございました！』


鴎外はニッコリ微笑んだ。

「それはよかったよ。私達はもう行かないと
いけない時間だからね。さきに失礼するよ」


「またねA！」


彼女は三人の姿が見えなくなるまで、その影をずっと見つめていた。

来た時より、あたりがずっと暗くなって、
燃えるような朱色に包まれていた。

Aは夕日を背に、静かに家路を辿って
いった。

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