謎解き遊戯のサイハテ

夢中歩行 ページ19

福「おい乱歩、またお前は夜に歩きまわっていたろう。やめろと云ったではないか」


乱「えぇ？なんの話？」


その日の朝、三人は朝食を食べていた。

福沢が昨夜の話を持ち出したのは、そのときである。


なんとなくあったかい雰囲気だったのが、
少し温度が下がったような気がする。


話を元に戻す。

実は以前、Aがまだ彼等に出会っていないことの出来事で、乱歩が部屋の外を夜に
歩きまわって、少し迷惑をかけたことがある。


福沢によれば、昨夜も同じことが起こった
らしい。

パタリパタリと歩きまわる音がしたと。


足取りは重苦しくって、まるで鉛でも引きずっているかのようだったとか。


乱「それって何時頃？」


福「夜中の三時」


そのとたん、Aが椅子から、おののいたように立ち上がった。

白い肌の顔をさらに真っ白にして、白いを通り越してもはや青白いような。

目は見開かれて、いたるところに泳いでいる。


『そ、そんな、、、そ、それは本当ですか』

まるで、熱したての鉄の棒を、脳天からぶち込まれたようなショックが走った。


意外や意外のその反応に、二人も目を
見張った。


福「あ、ああ、まあそうだが…何か心当たりがあるのか？」


すると彼女は一気に放心したように、あらざる虚空を見つめながら云った。


『それは…それはきっと…私です…きっと…
また…例の発作が…出たんです…嗚呼、、、』



ふらりふらりと貧血を起こしたように倒れかかったので、乱歩は慌てて彼女を支えた。



その出来事が余程のショックだったのか、
数十分ほど気を失っていた。



Aが気がついたときには、自分の体は
布団の上であった。

しかしながら、布団の上に体はあっても、
心は何処かへ置き去りにしたような空虚感
である。



だいぶ落ち着いた頃には、既に午後の二時を
過ぎていた。


『私には、おかしな病気があるんです。
寝ると…いつのまにかふらふら何処かへ歩いてしまうという…ここへ来る前からそうでした。
気付いたら外だった…なんてことも一度や二度ではなくて…それでうっかり車にはねられそうになったことだってあるんです。
だからここへ来るとき、コレがまた起きてしまうんじゃないかって、それで迷惑してしまうんじゃないかって…そしたらこの始末…』



福「夢遊病…というやつか…」


乱「そうなんだ…」




乱歩はAを、興味有り気に見つめた。

病気…？→←寝ない人

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