謎解き遊戯のサイハテ

願い事と聞き事 ページ15

乱「ね、ねぇ一寸(ちょっと)待ってよ」



陰る夕陽を背に、乱歩は走りながら、途切れ途切れに云った。

元々運動なんかはしない方だから、余計に
息づかいが荒い。


『なに』


やっと止まってくれたのだが、全体的に厭ぁな殺気が隠しきれておらず、顔をしかめているばかりなのである。



乱「ほら、覚えてるでしょ？結城さん…
だっけ？あの人がさ、僕らに推理対決をさせて、その報酬が、なんでも好きなことを三つ
聞いてもらうだったよね。僕が勝ったん
だから、当然、僕のお願いを聞いてくれるんだよね？」


Aはなにも答えない。


ただ乱歩の顔を凝視している。

乱「一つ目がね、君はさ、あの探偵事務所を、一人でやってるの？この質問に、答えてほしい
んだ」


『一人でやってる。それが如何だって云うの？
関係ないでしょ』



乱「じゃ二つ目。如何して一人でやってるの」



Aは少し目を泳がせて戸惑ったが、
軽く意を決したように、ため息を吐いてから
云った。


『両親がいないから。二人とも何年か前に、
事故で死んでる。私の元々住んでたところの
近くにあった孤児院は、すこぶる評判の悪さ
で、そこに送られるのは厭だったから、
父が趣味で使ってた事務所を適当に探偵事務所にした。だから、一人』


乱歩は迷ったようだった。


三つ目のお願いを、何にするか。


否、厳密に云えば、如何すれば、三つ目の
お願いで、彼女を救えるのかを、必死に
なって考えていたのだ。


きっと彼女は、おまけの四つ目を許してはくれないだろう。



乱「なら、ぼ、僕のところに来ない？
一人、つまんないでしょ？福沢さんもいるし、そ、そうすれば、もうお金のことなんて考えなくていいんじゃないかなって思うんだよ。
大丈夫、福沢さんならきっといいって云って
くれるから。もちろん、探偵事務所に通える
ような感じにしておくから。僕もね、同じような年頃の子が全くいないからさ、まあ、
つまんないんだよ」



しかしAはそれにうんともすんとも
云わずに、スタスタと歩き始めてしまった。


彼女の横顔には、冷や汗が垂れたような
気がした。


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