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龍side
龍｢やっぱ無理....｣
自分でどうにかしてみようと近くに落ちていた小枝でどかそうとしても、少し動くだけで状況は変わらない
足が動くだけで飛んでくるんじゃないかとビクついてしまう
龍｢....呼んじゃおう｣
また怒られるけど海青さんを待たせたくないし、交通費とご飯奢りでチャラにしてもらえばいいか
今度こそ名前を確認してトーク画面をタップする
電話をかけようとした時
｢龍君｣
龍｢うわぁ！？え、｣
急に声をかけられて慌てて振り向くとAさんがいた
龍｢え、なんで、あ、じゃなくてお疲れ様です｣
｢お疲れ様
やっぱりなんかあったんでしょ
部屋にも入らないで
もしかして泥棒でも入った？｣
龍｢いや、そうじゃないんですけど....｣
｢私丁度帰ろうとしてたから昂秀君に連絡して貸した物届けようと思ったんだけど、昂秀君は龍君に何も借りてないって言うし
心配だから様子見に来たの｣
心配までかけちゃったし
何やってんだ俺....
｢あ、虫｣
ドアにくっついていた虫に気づいたAさんはその2匹を持ち上げて外へと逃がした
龍｢Aさん、ああいうの平気なんですか？｣
｢ん？虫？全然平気
田舎育ちだからさ、周りが田んぼや畑ばっかで虫と共存してたようなものなの笑｣
龍｢そう、なんですか｣
｢もしかして....龍君、あれがいたから家に入れなかったの？｣
龍｢....本当にすみません
Aさんに迷惑かけるつもりじゃ｣
｢そっかそっか
嫌いなものが目の前にいたら怖いよね｣
うんうんと1人で頷くAさんに戸惑ってしまう
｢私も昔は凄く怖がりだったの
チワワみたいな小型犬でも吠えられたら泣いてたし、近づかれたら逃げちゃうし｣
龍｢なんか、意外ですね｣
｢だから今の龍君の気持ち凄いわかるんだよね
苦手な物って簡単に克服できないし｣
龍｢Aさんはどうやって克服したんですか....？｣
もし秘訣があるなら自分も克服できるかもと淡い希望を抱いた
けど
｢あー、私の場合は参考にならないよ？
うちの母親が結構凄い人で、ある日知り合いの家に連れていかれたの
で、その知り合いの家で犬を10匹ぐらい飼ってて一日中一緒にいれば好きになるからって犬の中に放り込まれたの......｣
その希望は呆気なく散ってしまった
｢ね？参考にならなかったでしょ？｣
龍｢ですね....｣
結局Aさんにお礼を言って解散し、その日は無事に家に入れたのだった
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作者名：あすか | 作成日時：2022年11月28日 22時
