壱 ページ2
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月明かりが、屋敷の庭にある池にぼんやりと浮かぶ夜。秋を控えた中、虫達が羽を擦らせチリチリと鳴いている。
いつからだろう。
こんなにも風流な景色を見ても、音を聞いても胸が高鳴らなくなったのは。
『……人の屋敷に、何か用でもあるのかしら。』
縁側に腰掛け、足をぷらぷらとさせながら揺れた庭の草陰に話しかける。
そこに何かがいることは少し前から気がついていたし、それが獣などの類でないことも分かっていた。
ので、二足歩行の男がひょこりと顔を出したことになんら驚きはしなかった。
「気付かれていたのか。なかなか面白いお嬢さんだ。」
不気味な男だ。
言葉を発する時に見えた白い歯は牙のように尖っていて、腰に当てている手には鋭い爪が生えている。
仕舞いには、綺麗な瞳に文字のようなものが刻まれている。
そんな特徴的な体つきを見て、人ならざる者だということくらいすぐに分かった。
『面白いなんて言われたの、初めてよ。』
「そうなのかい？意外だなぁ。」
『あなたは変わってるのね。』
これも、人ならざる感覚の違いなのだろうか。
何をしても楽しいと思えない者に対して、面白いだなんてまったく似つかない言葉を添えるのは、変だ。
変わっている。
『……あなた、何者なのかしら。』
「君は何だと思う？」
にっこりと屈託のない笑みを浮かべ、彼はこちらを見つめる。確認の為に聞いたはずだった疑問の言葉を、同じように返されてしまい心が揺らぐ。
だが、目の前の事実は数年前の象形と重なり頭の中で交差した。
鬼。人を喰らう、鬼だ。
鋭い爪と尖った牙。なによりも、彼から滲み出る独特な雰囲気と、今が夜だということ。
それが、鬼であるという確かな証。
『負けたわ。どうぞ、好きなだけ私の肉を喰らうといいわ。』
「……随分素直だね。死ぬのが怖くないのかい？」
『最近ね、何をしていても楽しくないの。そんな状態であと数十年と生きるより、このまま若いうちに鬼の腹の中で朽ちる方がマシよ。』
気が付けば私は、先程の彼と同じような笑みを浮かべて言い放っていた。
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あるでんと(プロフ) - ぱんさん» コメントありがとうございます。そう言ってもらえて嬉しいです。風邪は年末から年始にかけてすでにひいたので大丈夫だと思います笑 (2020年1月15日 23時) (
レス) id: 484fc6b4f6 (このIDを非表示/違反報告)
ぱん - とても面白いです！続きを楽しみにしてますが、すんごい寒いので体調に気をつけてくださいね！ (2020年1月14日 17時) (レス) id: 03bfdf54f9 (このIDを非表示/違反報告)
あるでんと(プロフ) - あさん» 童磨のキャラブレがとても心配だったので、そう言っていただけて嬉しい限りです。完結までは私のペースになってしまうと思うのですが頑張ろうと思っているので、これからもぜひ、よろしくお願いします。 (2019年10月27日 7時) (レス) id: ee9413cc7b (このIDを非表示/違反報告)
あるでんと(プロフ) - 狂狐さん» 返信遅れて申し訳ありません。勿体ないお言葉、本当にありがとうございます。とても嬉しいです。少しずつ更新していこうと思っているので、これからもよろしくお願いします。 (2019年10月27日 7時) (レス) id: ee9413cc7b (このIDを非表示/違反報告)
あ - 童磨さん最高です。すごく面白かったです、これからも応援させていただきます。 (2019年10月24日 17時) (レス) id: 87b58a18e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あるでんと | 作成日時：2019年7月20日 15時
