第五十二話 ページ7
・
「二人共、僕のために…ありがとう」
『全然良いよ！それに、友達とお泊まりなんて初めてだからワクワクするし』
彼に笑いかけてそう言えば少し嬉しそうな顔をする明智くん。
この状況にワクワクしている自分がいるのは本当のことだ。何せ、そんなことをする友達が今までいなかった訳だし。
すると、隣でずっと黙っていた織田くんが口を開いた。
「明智」
「何？」
「平和を望む貴様が何故この学校にやって来た。
貴様には戦は似合わん」
「……だよね」
少し自信なさげな笑みに変わった明智くんは、窓の方へ歩きながら、中学時代の話をしてくれた。
明智くんは中学生の時、パシリをしていたらしい。
そしてそんな不良の彼らに、「中身がない」やら「寄生虫」やら酷く言われていた…とのこと。
「でも僕、不良と呼ばれる人達が大好きなんだよね。世間からは落ちこぼれで暴力的だと思われてるけど、実は……とっても純粋な人達だよね
憧れるんだ……信長くんにも」
そこまで言って振り返ると、此方へ戻ってきて、近くにあった椅子に座った。
「自分に正直な人だよね、羨ましいよ」
「……羨ましいなら貴様も正直に生きれば良い」
「…そうだね」
少し不安げにそう言った彼を元気づけようと、私は思っていたことを口に出してみる。
『…凄いね、明智くんは』
「え？」
『だって……あんな酷いことを言われてきたけど、それでも不良が好きで、憧れてるんでしょ？
私もその気持ちはちょっと分かるけど…そう思って、今行動出来てるのはやっぱり凄いよ』
ちょっと盛ったかもしれないけど……そう思ったのは事実だ。
チラ、と視線を上げて彼の方を見れば、少し照れくさそうにしながら「ありがとう」と言われた。
「凄いだなんて…そんなこと言ったらAさんもそうなのに」
『え？そう？…まあでも、私も明智くんはもう少し自分に正直に生きた方が良いと思うよ』
「じゃあ、正直に言うね」
「…おう」
「僕さ……干し柿苦手なんだよね」
『へっ？』
その言葉にはぁ？と言ったような顔をする織田くん。
初めて見るその顔に吹き出しそうになったが、彼は至って真剣なので我慢する。
「あんな美味いものをか？」
「ごめんね」
そんな明智くんの言葉にショックを受けたのか、見開いた顔のまま織田くんがこちらを見る。
つまるところ、私も苦手なのか聞いているのだろう。
必死そうな織田くんの顔をこちらに向けられ、私はついに笑ってしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 286人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
moka(プロフ) - a-yaさん» 何と嬉しいお言葉...！！私なんかの作品を何回も読み直して頂けてるなんて凄く嬉しいです🥹✨️相変わらずのゆっくり更新ではありますが少しずつ話を進めていきますので暇つぶしにでも読んで頂けたら嬉しいです🥰 (11月20日 21時) (
レス) id: 29521248bc (このIDを非表示/違反報告)
a-ya(プロフ) - この作品めちゃくちゃ面白いです！何回読み直しても楽しめます❤️これからも応援しています！ (10月15日 16時) (レス) id: 672b289667 (このIDを非表示/違反報告)
moka(プロフ) - さらさん» わー😭💓いつもドキドキしながら更新してるので面白いと言って下さって物凄く嬉しいです…！これからもさら様をキュンキュンさせられるよう頑張りますね🥰それに2回もコメントありがとうございます！気持ちだけでもとても嬉しいです✨ (2022年10月3日 18時) (レス) id: 6967548606 (このIDを非表示/違反報告)
さら - ホントにいつもたくさんの更新ありがとうございます！！番外編も凄く面白かったです！！榊原くんも格好よかった！！上杉くんにもｷｭﾝｷｭﾝ来てます！！私も星いっぱい押したいくらいです！！でも１つしか送れない！！気持ちはたくさんです！！ (2022年10月3日 9時) (レス) @page23 id: f9b4a84be1 (このIDを非表示/違反報告)
Chiharu(プロフ) - mokaさん» 届いていたみたいで安心しました🥺 私なんかの小説で清正くん好きが増えているなんて……！ 感激です😭 本当に本当に、ありがとうございます！ 清正くん出てきたらいいね200回くらい押しますね🥰 (2022年10月2日 22時) (レス) @page23 id: bd8f0e2e75 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：moka | 作成日時：2022年9月28日 13時
