貴方と私のアバンチュール２【新・信長公記】

第七十一話 ページ30

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「何だよこのモップ」

「ゴミにはピッタリの見舞いだろ？」

なるほど、大変悪趣味だ。本当に人を挑発するのが得意な人だと実感する。

井伊くんがモップを投げ捨てると、家康くんは私達の方へ近寄ってくる。
「お前ら、本当にゴミは群れるのが好きだよなぁ」
自然と榊原くんの服を掴む力が強まる。私の存在に気付いているとは分かっていても、怖くて身を隠してしまう。

「ただ、ゴミがいくら集まろうがただのゴミ。掃除機の吸い込み一発で消え去る」
すると突然、家康くんは「コォォォオオ！」と謎の挑発をしてくる。
な、なに、もしかしてゴミ繋がりで掃除機の真似？


「…なぁ、お前もそう思わんか？」
彼は私達の奥の方を見ながらそう言う。
誰に向けて？と視線を後ろに流すと、後ろのカーテンから現れたのは明智くんだった。

「ええ」
「明智…」
「さっき、家康くんが皆の作戦に危機感を感じてるって言ってましたけど…それは間違いです。
家康くんは皆が今のやり方でポイントを稼ぐと読んでいました」

「あぁ…読み通りに事が運び過ぎて、愉快愉快」
私達を鼻で笑い、背を向けたかと思えば、再び足を止めて此方を振り返った。

「ああそうだ、見舞いがもう一つあった。

…井伊を襲った奴は俺じゃない」
「じゃあ一体誰が…！」
「裏切り者の仕業だ」
「裏切り者…？」
「おれの息のかかったなぁ。そしてそいつは…」

そう言うとここにいる一人一人を指差していく。
その瞬間、家康くんとバッチリ目が合ってしまった。
う……ま、まあ流石にバレてるよね…
どんな眼差しを向ければ良いのか分からず、彼からつい目を逸らす。
そしてもう一度見た時には、もう私のことは見ていなかった。

「お前らの中にいる…お前らの中になぁ！！」
私達を全員指差した後にどこかへ向かってそう言う家康くん。恐らく、特進クラスに向けてだろう。
それにしても、特進クラスに裏切り者…皆の中に裏切り者がいるの？
信じたくないけど、それと同時に疑いの気持ちも浮かんできてしまう自分が嫌だった。

「愚かだよなぁ！ゴミの癖に集まればどうにかなると思い込んでいる。だがそんなのは幻想！現実は！隣にいる裏切り者を見つけることすらできない。
フッフ…なぁ？ゴミの親分」
そう言って信長くんと向き合うと、先程の掃除機の真似をして保健室を出て行った。

『………』
皆も、誰かを疑っているのかと思うと、キュッと胸が詰まった。

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