ここはロマンス大通り【ars】 (ページ10)

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お財布を拾って届けた時は、褒めてくれた。

「よくネコババしなかったねー」
「当たり前！私は善良な市民なの！」
「偉い偉い！」

ポンポンと頭を撫でられてきっと私の顔は変になってたと思う。

学校の居残りで帰りが遅くなった時には、心配してくれた。

「こんな時間まで学校？」
「うん、課題が終わらなかったから...」
「大変だね、気を付けて帰んなよ？」
「はい！」

敬礼したら敬礼を返してくれて、嬉しかった。

三年の夏。
友達と行った海で大学生にナンパされて、何となく皆ノリノリだったから何となく付き合いで遊んだ。
ノリが悪いって言われるのも嫌だったし、まぁこの場だけだろうって思ってたし。

なのに、その中の一人に世間話の流れでうっかり学校を教えてしまって、二学期に入った時に通学路で待ち伏せされてた。

「遊ぼうよ」ってしつこくついて来られて、どれだけ断っても離れてくれなくて

そうだ...潤さんに助けて貰おう...！って、交番まで走った。

なのに、こんな時に限って交番の前には誰も立ってなくて中を覗いても潤さんは居なくて小太りの優しそうなお巡りさんがお婆さんとお話中。

普通に考えたら、そのお巡りさんにだって助けて貰えたのに私は潤さんが居ないって事にパニくってしまって駅前までまた走ってしまった。

「何で逃げんのー？」

必死で走ってたはずなのに、すぐに追いつかれたってだけでも怖いのに

フフッて余裕で笑うその大学生に腕を掴まれて、一気に怖くなって涙が溢れた瞬間

私の腕を掴んでた手を掴む、もう一本の手。

顔を上げたら、そこに立ってたのはスーツ姿の潤さんで

「お兄さん、何やってるのかな？」

低い声が聴こえた時、また涙がボロボロって零れた。

「はぁ？アンタには関係無いでしょ？この子と遊んでるんだけ！ねぇ？」
「俺には彼女が嫌がってるように見えるけど」
「そんなのアンタの勝手な意見だろ。ってか、離せよ！」

大学生の手を掴んだまま「離せないよ、君がこのまま『帰る』って言ってくれなくちゃ」ってちょっと微笑んでる。

「アンタには関係無いだろ！」
「あるよ。善良な市民を守るのが、俺の仕事だから」
「何それ、ヒーローかよ」

クハッて馬鹿にしたように笑った大学生に、潤さんは笑顔を崩さず

「そうだね。ヒーローになれたら良いなと思ってるよ」

そう、言った。

本当にヒーローだと思った。

潤さんは、ヒーローだ。

制服を着てなくても、ヒーローだ。